ホワイトヘッドの哲学は「有機体の哲学」と言われるとともに「プロセス哲学」とも言われ、この宇宙が生成し変化していく様を捉えて描き出そうとしているものであるようだ。
私は今回ホワイトヘッドを主にドゥルーズとどのような関係にあるのかという関心から読み始めてみた。
主著『過程と実在』よりも分量が少なく、ある意味到達点ともいえる本書『観念の冒険』は、比較的短い論考の集成であるため、ホワイトヘッドの哲学に参入する一冊として適しているものであるように思って手にしたのだが、とりあえず読み通せることが出来たので、選択としては間違っていなかったと思っている。。
潜勢体を現実化する創造性を強調するホワイトヘッド哲学は、アリストテレスへの参照をより強く期待しながら読む傾向が出てくるのだが、本書は極めて強くプラトンの思考に寄り添いつつ展開しているのがひとつの特徴ではないかと思った。
プラトンの後期思想の七つの主要概念「イデア」「物理的要素」「プシケー」「エロース」「調和(ハルモニア)」「数学的諸関係」「受容者(リセプタクル)」と、文明の一般的定義としてホワイトヘッドによって提唱された五つの主要概念「真理」「美」「冒険」「芸術」「平安」をめぐって順次思索展開されている論考は、刺激的で素人読者にとっても一読に値するものであるが、普通一読ではすべてを把握することはできないので、理解を深めるためにはまた本書に返ってくる必要がありそうだ。
創造性とは、潜勢態を現実化することである。そしてこの現実化の過程が、経験の契機なのである。こうして抽象において見られると、客体は受動的であるが、結合において見られると、それは世界を駆り立てる創造性を担っている。この創造の過程が<宇宙>の統一性の形式なのである。
(第11章「客体と主体」§10 創造性 より)
【目次】
第1部 社会的
第1章 序説
第2章 人間の魂
第3章 人道主義の理想
第4章 自由の様相
第5章 力から説得へ
第6章 予見
エピローグ
第2部 宇宙論的
第7章 自然の法則
第8章 宇宙論
第9章 科学と哲学
第10章 新宗教改革
第3部 哲学的
第11章 客体と主体
第12章 過去、現在、未来
第13章 諸契機のグループ化
第14章 現象と実在
第15章 哲学的方法
第4部 文明化
第16章 真理
第17章 美
第18章 真理と美
第19章 冒険
第20章 平安
【付箋箇所】
35, 41, 50, 53, 71, 90, 109, 115, 122, 124, 148, 163, 170, 184, 200, 216, 226, 233, 234, 246, 263, 268, 281, 291, 293, 324, 327, 333, 346, 368, 370, 373, 378, 381, 408, 452, 454