読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

空間(ラウム)の思想家 カール・シュミット『パルチザンの理論 政治的なものの概念についての中間所見』(1963)

リアル空間のウィルス感染経路は活動自粛要請によって減少している(はず)。その反面、サイバー空間の活動量は増え、こちらのウィルス感染経路は増えている。身を守るという意味では、サイバー空間での活動もより慎重になるべき状況ではある。命にはかかわらないかもしれないが、人生にかかわる場合もあるので、自戒の意味を込めて、サイバー空間でのセキュリティ意識を喚起。

人間の意志の善悪にかかわらず、また、その目的が平和的あるいは軍事的なものであることにも関係なく、人間の技術が進歩するということはすべて、新しい諸空間を、および伝来の空間構造が無際限に変わるということを、生み出すのである。このことは、宇宙空間の航行という外面的なめざましい空間拡大についてのみならず、われわれの古くからの地上の居住空間、労働空間、祭儀空間、活動空間についてもあてはまる。「住居は不可侵である」という命題は、今日――すなわち、電灯、ガス供給、電話、ラジオ、テレビの時代において――、一二一五年のジョン王やマグナ・カルタの時期――すなわち城主が跳ね橋を高く架けることができた時期――とはまったく別種の枠づけや保護を惹き起こしている。人間の活動能力が技術的に進歩することによって、たとえば一九世紀の海賊法のような、規範体系はすべて砕け散る。海岸に接している空間が、すなわちいわゆる大陸棚が、人間の新しい行動空間として、無主の海底から出現してくる。太平洋の無主の深海に、放射線廃棄物のための処理庫が発生する。工業技術的進歩は、空間構造とともに空間秩序をも変えるのである。(「最近の段階の局面と概念」Ⅰ空間局面 p146-147)

 サイバー空間の出現と急速な発展のインパクトはかなり大きい。

 

www.chikumashobo.co.jp

カール・シュミット
1888 - 1985
新田邦夫
1930 -