読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

社会学

宇野重規『トクヴィル 平等と不平等の理論家』( 講談社選書メチエ 2007, 講談社学術文庫 2019 )社会制度とともに変容する想像力と象徴秩序

『アメリカの民主主義』をメインに考察されるトクヴィルの思想。封建社会が崩れて民主主義が台頭し、抑圧されてきた庶民層が平等に考え発言することができるようになると、想像における自己像と現実の自己のギャップに苦しむことも可能になり、身を滅ぼして…

ジョルジュ・バタイユ『呪われた部分 ―普遍経済学の試み』(原書 1949, 二見書房ジョルジュ・バタイユ著作集第六巻 生田耕作訳1973)余分なものの活用のしかたについての考察

普遍経済学三部作の第一作。断片的エッセイが多いバタイユの作品にあって、珍しく体系的な構造をもった作品。前日の見田宗介『現代社会の理論』や、ロジェ・カイヨワ『聖なるものの社会学』など、生産と消費のサイクルについて論じられる場合によく参照引用…

見田宗介『現代社会の理論 ―情報化・消費化社会の現在と未来―』(岩波新書 1996)バタイユの普遍経済学との共闘

『自我の起源』(1993年)につづく仕事。未来に残したいと著者が願っている七作品のうちの一作。見田宗介(真木悠介)は人に何と言われようとつねに希望のある書物を書こうとしていると決めているところがあるのだなと、複数作品を読みすすめるうちに感じる…

オーギュスト・コント『ソシオロジーの起源へ』(原書 1854, 白水社 杉本隆司訳 2013)マルクス、ウェーバー、デュルケムも読んだ社会学の祖の著作

社会学者見田宗介(真木悠介)の本を三冊連続で読んだところで、社会学のはじまりを知っておくために社会学 sociologie という言葉自体の生みの親、オーギュスト・コントの著作を読んでみた。見田宗介の本にはウェーバーやデュルケムへの言及はあってもコン…

見田宗介『現代社会はどこに向かうか 高原の見晴らしを切り開くこと』(岩波新書 2018)「世界の有限性を生きる思想」を語る

貨幣による交易がはじまり世界が無限化したときに人々は衝撃をうけ、その空気感のもとではじめて哲学と世界宗教が生まれたというヤスパースの「軸の時代」という考えの延長上で、環境的にも資源的にも限界状況に踏み込んでしまった現代は、また別の「軸の時…

見田宗介『社会学入門 人間と社会の未来』(岩波新書 2006)二十一世紀以降のユートピアについての提言

2017年2月の6章改訂版以前の版での繙読。改訂前後の6章の目次を見る限り、2018年出版の『現代社会はどこに向かうか 高原の見晴らしを切り開くこと』で改訂分は補完可能(序章が改訂版6章と同一)。20世紀後半の人間増殖のピーク時と後続のピークアウト…

真木悠介『自我の起源 愛とエゴイズムの動物社会学』(岩波書店 1993, 岩波現代文庫 2008 ) 読むことの先に初めて出現するまばゆい世界

先日読んだ『戦後思想の到達点』収録の大澤真幸との対談で社会学者見田宗介(真木悠介)は後世に残したい仕事を七つ挙げていた。理論的なものとして『時間の比較社会学』『自我の起源』『現代社会の理論』『現代社会はどこに向かうか』の四点。その他で熱心…

ピエール・ブルデュー『自己分析 これは自伝ではない』という本人からの自伝的資料集成(原書 2004, 藤原書店 2011) 闘争の休止に対する願望と闘争への固執

敵と思うものが明確にいた。社会学者としての業績よりも、敵と思うものに対しての自身の立場の表明と抵抗こそが重要であった人生ではなかったのかなと思わせる、本人曰く「自伝ではない」、一個人の人生の社会学的資料集成であり、死の時まで推敲を重ねてい…

シリーズ・戦後思想のエッセンス『戦後思想の到達点  柄谷行人、自身を語る 見田宗介、自身を語る』(NHK出版 2019 柄谷行人 、見田宗介、大澤真幸)抑圧の回帰と自由への飛翔

学恩に応えなければいけないという一世代下の大澤真幸の真っ正直な気持ちが見事に実を結んだ傑作対談集。 日本の知の世界を切り開いてきた先鋭二人の、それぞれ老い朽ちることのない孤高の歩みの根源にまで分け入ろうとする、準備の整った大澤真幸の態勢がす…

エルンスト・ブロッホ『異化』(原書 異化Ⅰ ヤヌスの諸像 1962, 異化Ⅱ ゲオグラフィカ 1964, 白水社 1986)はっきりしないものに輪郭を与え、キツイものを揉みほぐす言葉の力

度重なる亡命と異国の地での生活のなかで希望と現在を語りつづけた異能の思索者、エルンスト・ブロッホ(1885 - 1977)。ナチス活動期ドイツでのユダヤ人という、これ以上ない苦難苦境の中にありながら、軽さを決して失うことのない文章の数々は、書かれた内…

ジグムント・バウマン『グローバリゼーション 人間への影響』(原書 1998, 訳書 2010 法政大学出版局)時間/空間が圧縮された時代における時間/空間の消費の格差

原書が出たのが1998年、OSといえばWindows95,98でアナログ回線のダイヤルアップ接続が標準だった頃。訳書が出たのが2010年、OSといえばWindows XP、Vistaで光回線、無線LANが広がっていった時代、まだWifi使えるのが普通ではなかった時代。現在2021年、Wifi…

ゲオルク・ジンメル『社会学』(原書 1908, 白水社 1994 上下二巻 居安正 訳)最初から全部読まなければならないという思いを捨ててしまえば、補説をつまみ食いするだけでも十分楽しめ役に立つジンメルの論考(「多数決についての補説」あたりが特におすすめ)

分厚い本に向き合うにはどうしても決意とかが必要になってくる。買ってしまったら余計にそうだ。全部読まないといけないし全部理解しないといけないという圧を自分にかけてしまっている。そうなると息苦しさや求められてもいない自己採点のループに陥ってつ…

ゲオルク・ジンメル『文化論』(阿閉吉男編訳 文化書房博文社 1987)ジンメル50歳台の後期思想「生の哲学」が根底に流れる熱量の高い文化論

50歳を越えてからのジンメルが生の展開や発展や開化や更新ということを強く説くようになったのは、ニーチェに傾倒した思想的背景が前面化してきたのに加え、老いを迎え病も得やすくなった自分自身を鼓舞する意味もあったのではないかと勝手に想像しながら…

ゲオルク・ジンメル『社会的分化論 社会学的・心理学的研究』(原書 1890 石川晃弘, 鈴木春男 訳 中央公論社 世界の名著 47 1968, 中公クラシックス 2011) 分化と分業による個人への非関与が基本姿勢となる近代社会のなかでの自由と孤独というジンメル的思考のはじまりの書

ジンメル32歳の時の処女作にして出世作。ちなみに博士論文は23歳の時の「カントの自然的単子論にもとづく物質の本質」。ヨーロッパ的秀才。 本作は近代社会における社会的な各種地位の分化と分業の進展について所属先とメンバーたる個人の関係を見ながら…

ゲオルク・ジンメル『ジンメル・エッセイ集』 川村二郎編訳 (平凡社ライブラリー 1999)アドルノやベンヤミンに影響を与えたエッセイのスタイルと切れ味の良い文章

哲学者・社会学者としての論文や講義録にもジンメル節と言っていいようなことばの選択が匂い立つことはままあるのだが、一般読者層に向けて書かれたジンメルの哲学的エッセイは文化や芸術を鮮やかに扱っていて、より一層書き手の個性が際立って、文章自体が…

西垣通『生命と機械をつなぐ知 基礎情報学入門』(高陵社書店 2012)ネオ・サイバネティクス論の一分野として著者が提唱する基礎情報学の高校生を想定した初学者向け教科書32講

『基礎情報学 生命から社会へ』(2004)『続 基礎情報学 「生命的組織」のために』(2008)と展開してきた基礎情報学のエッセンスを提唱者本人が可能なかぎりわかりやすくコンパクトにまとめあげた一冊。図版の多用や本文中の具体例あるいは関連コラムで親しみや…

【ジンメルの社会学を読む三連休】03.寝落ちで連休終了 大作1件読了も始まり感のほうが大きい

18:30、『社会学』下巻読了後、食料品買い出し、夕食、晩酌。『文化論』読みながら21:00くらいに寝落ち。4:30くらいに目が覚める。予定の90%くらいの進捗だが、なんとなく満足しているような幸福感とともに目覚める。めずらしい。自己満足…

【ジンメルの社会学を読む三連休】02.越境の能力者、ゲオルク・ジンメル

論文とエッセイ、科学と芸術、学問と商業文芸。社会学者としてのゲオルク・ジンメルの本業は私が提示したカップリングの前者、著述家としての本質は後者にあるのかなと考える。位置づけがしづらい人物である分、学問的評価が若干厳しめに推移しているような…

【ジンメルの社会学を読む三連休】01.第一印象 生気論つながりは関係なく、ジンメルはおだやかなドゥルーズ=ガタリのような感じ

ゲオルク・ジンメルもドゥルーズ=ガタリもちゃんと読んでいるわけではないので一読者の勝手な印象でしかないのだが、ジンメルはおだやかなドゥルーズ=ガタリ(且つガタリ弱め)のような感じがしていて、咀嚼するのに大変なところはあるものの、いろいろお…

【ジンメルの社会学を読む三連休】00.準備 読みきれないかもしれないくらいの分量として五冊を用意

三日連続の休みなので、社会学をまとめて読もうかと・・・ 二クラス・ルーマンも候補にあったけれど、資料が集まらず、ゲオルク・ジンメルに決定。 1.『社会的分化論 社会学的・心理学的研究』(1890) 石川晃弘, 鈴木春男 訳 (中央公論社 世界の名著 47 196…

アラン『小さな哲学史』(原書 1918, 1943 みすず書房 2008)視覚障害者のための点字本テクストに込められた意味を想像する

読み通したあとに「訳者あとがき」でもともと点字出版のために書かれたテクストだったということをはじめて知り、哲学史にしては変な配分だなと思いつつ読んだ文章の意味合いを、あらためて想像してみようと思った。 原書のタイトルは『盲人のための哲学概論…

モーリス・メルロ=ポンティ『シーニュ』(原書1960, 訳書 竹内芳郎監訳みすず書房 1969-1970 1・2分冊)

哲学と芸術と政治を語ったメルロ=ポンティ晩年の著作。五十代前半で逝ってしまった詩的哲学者の存在が惜しい。死ねないんじゃないかと思うくらい長生きしたときにどんな文章を書いてくれていたかと想像すると、その存在の大きさに尊敬の念が湧いてくる。サ…

須藤康介+古市憲寿+本田由紀『文系でもわかる統計分析』(朝日出版社 旧版 2012, 新版 2018)

数学が苦手な社会学者古市憲寿が狂言回しとなって、統計分析の初歩をレクチャーしてもらう対談形式の一冊。用語に馴染むというところからはじめてくれているので、敷居がとても低く初心者に優しい。IBMのSPSSを実際に操作しながら統計分析の手法を学んでいく…

上村忠男『アガンベン 《ホモ・サケル》の思想』(講談社選書メチエ 2020)

訳者でもある上村忠男が読み解くアガンベンの《ホモ・サケル》プロジェクト。高名な方であるのにかかわらず、瑞々しく真摯な執筆の姿勢に頭が下がる思いがする。 アガンベンの仕事をたどるなか、ベンヤミンからスピノザへ導かれるような感触もあったので、ス…

ピエール・ブルデュー『メディア批判』(原題『テレヴィジョンについて』1996, 藤原書店 2000)

ジャーナリストの池上彰さんは、どこかの新書で、テレビは見るものではなく出るものだということをおっしゃっていた。いちばんの理由は情報収集にかかる時間面でのコストパフォーマンスが悪いためということだったと思う。当事者の意見なので、そんなものな…

イマニュエル・ウォーラーステイン『脱商品化の時代 アメリカン・パワーの衰退と来たるべき世界』(原書2003, 訳書2004)

左翼を自認する社会学者ウォーラーステインが提示する希望をこめた未来世界のモデル。 資本主義システムの決定的な欠点は、私的所有にあるのではなく――それは単に手段にすぎない――商品化にある。商品化こそが資本の蓄積において不可欠の要素なのである。今日…

モリス・バーマン『デカルトからベイトソンへ 世界の再魔術化』(原書1981, 訳書1989, 2019)

近代における世界の脱魔術化が引き起こした硬く冷めた知の世界を、魅力あふれる高度に科学的な魔術化した知の世界へ。帯を書いた落合陽一や解説のドミニク・チェン、さらには訳者の柴田元幸にも大きなインパクトを与えた著作ということで、楽しみに読んだの…

ゲオルク・クニール+アルミン・ナセヒ『ルーマン 社会システム理論』(原書1993,訳書1995)

かなりきっちりとルーマンの社会システム理論を紹介してくれている入門書。教科書としても使われているようで、この手の書籍にしてはかなり重版されている。さきにオートポイエーシス(自己創出、自己産出)論を少しかじっていないと飲み込みにくいかもしれ…

石崎晴己編訳 エマニュエル・トッド『トッド自身を語る』(藤原書店 2015)

日本で独自に編まれたインタビュー集。エマニュエル・トッドはフランスの歴史人口学者・家族人類学者。各国各地域の家族構造から人間の社会活動としての政治・経済・文化を解析するすぐれた学者。本書では特に経済に関する洞察が光っている。 中国人が人民元…

仲正昌樹『日本とドイツ 二つの戦後思想』(2005, 光文社新書)

仲正昌樹は人文系の教師として優れた入門書を数多く出版している。新書のため比較的分量軽めに書かれているが、本書も情報を手に入れるには有効な著作となっている。対象をかみ砕いて丁寧に紹介することを普段から志向しているようで、仲正本人の主張や思考…