社会学
1955年刊行のマネ論を中心に、バタイユの絵画論を集めた一冊。マネ論のほかは印象主義論、ゴヤ論、ダ・ヴィンチ論が収められている。共通するのは、ある種の痛ましさに直結するような、絵画作品の恍惚のたたずまいを産みだした画家たちを論じているところ。…
バタイユ晩年(といっても58歳の時)のエドゥアール・マネ論。西洋絵画の世界にブルジョワ的日常空間と色彩の平面性を導入することで、本人の意図しない数々のスキャンダルをひきおこし、印象派をじはじめとした近代絵画の道を切り拓くことになったエドゥ…
無神学大全として生前刊行された第一巻『内的体験』(1943)、第二巻『有罪者』(1944)と、刊行が予定されていたが未刊に終わった第四巻をバタイユ研究者の酒井健が編集した日本オリジナルの『純然たる幸福』をここ二週間くらいかけてちょこちょこ通して読んで…
装丁は大事。 バタイユの論文の新訳の装丁に、キリンジの「スイートソウル」のプロモーションビデオの五つのシーンが使われていたので、どんな関連性があるのか気になって、はじめてキリンジのCDを聞き、ネット上でPVの動画を探して視聴してもみた。 は…
ユルゲン・ハバーマスのもとで哲学の学位取得した著者による辛口のアドルノ入門書。フランクフルト学派全体の研究として評価の高い大冊『フランクフルト学派 ―歴史、理論的発展、政治的意義』(1988)と同時期に書かれたアドルノの業績全般の紹介の書で、コ…
「摸倣」という武器一本で物理・生命現象から社会現象まで語りきる途方もない著作。データ検証からではなく推論ベースの展開で、ほんとかねと疑いたくなるようなところもままあるのだけど、ドゥルーズが称賛していて、それに乗る形で蓮實重彦も推薦している…
『アメリカの民主主義』をメインに考察されるトクヴィルの思想。封建社会が崩れて民主主義が台頭し、抑圧されてきた庶民層が平等に考え発言することができるようになると、想像における自己像と現実の自己のギャップに苦しむことも可能になり、身を滅ぼして…
普遍経済学三部作の第一作。断片的エッセイが多いバタイユの作品にあって、珍しく体系的な構造をもった作品。前日の見田宗介『現代社会の理論』や、ロジェ・カイヨワ『聖なるものの社会学』など、生産と消費のサイクルについて論じられる場合によく参照引用…
『自我の起源』(1993年)につづく仕事。未来に残したいと著者が願っている七作品のうちの一作。見田宗介(真木悠介)は人に何と言われようとつねに希望のある書物を書こうとしていると決めているところがあるのだなと、複数作品を読みすすめるうちに感じる…
社会学者見田宗介(真木悠介)の本を三冊連続で読んだところで、社会学のはじまりを知っておくために社会学 sociologie という言葉自体の生みの親、オーギュスト・コントの著作を読んでみた。見田宗介の本にはウェーバーやデュルケムへの言及はあってもコン…
貨幣による交易がはじまり世界が無限化したときに人々は衝撃をうけ、その空気感のもとではじめて哲学と世界宗教が生まれたというヤスパースの「軸の時代」という考えの延長上で、環境的にも資源的にも限界状況に踏み込んでしまった現代は、また別の「軸の時…
2017年2月の6章改訂版以前の版での繙読。改訂前後の6章の目次を見る限り、2018年出版の『現代社会はどこに向かうか 高原の見晴らしを切り開くこと』で改訂分は補完可能(序章が改訂版6章と同一)。20世紀後半の人間増殖のピーク時と後続のピークアウト…
先日読んだ『戦後思想の到達点』収録の大澤真幸との対談で社会学者見田宗介(真木悠介)は後世に残したい仕事を七つ挙げていた。理論的なものとして『時間の比較社会学』『自我の起源』『現代社会の理論』『現代社会はどこに向かうか』の四点。その他で熱心…
敵と思うものが明確にいた。社会学者としての業績よりも、敵と思うものに対しての自身の立場の表明と抵抗こそが重要であった人生ではなかったのかなと思わせる、本人曰く「自伝ではない」、一個人の人生の社会学的資料集成であり、死の時まで推敲を重ねてい…
学恩に応えなければいけないという一世代下の大澤真幸の真っ正直な気持ちが見事に実を結んだ傑作対談集。 日本の知の世界を切り開いてきた先鋭二人の、それぞれ老い朽ちることのない孤高の歩みの根源にまで分け入ろうとする、準備の整った大澤真幸の態勢がす…
度重なる亡命と異国の地での生活のなかで希望と現在を語りつづけた異能の思索者、エルンスト・ブロッホ(1885 - 1977)。ナチス活動期ドイツでのユダヤ人という、これ以上ない苦難苦境の中にありながら、軽さを決して失うことのない文章の数々は、書かれた内…
原書が出たのが1998年、OSといえばWindows95,98でアナログ回線のダイヤルアップ接続が標準だった頃。訳書が出たのが2010年、OSといえばWindows XP、Vistaで光回線、無線LANが広がっていった時代、まだWifi使えるのが普通ではなかった時代。現在2021年、Wifi…
分厚い本に向き合うにはどうしても決意とかが必要になってくる。買ってしまったら余計にそうだ。全部読まないといけないし全部理解しないといけないという圧を自分にかけてしまっている。そうなると息苦しさや求められてもいない自己採点のループに陥ってつ…
50歳を越えてからのジンメルが生の展開や発展や開化や更新ということを強く説くようになったのは、ニーチェに傾倒した思想的背景が前面化してきたのに加え、老いを迎え病も得やすくなった自分自身を鼓舞する意味もあったのではないかと勝手に想像しながら…
ジンメル32歳の時の処女作にして出世作。ちなみに博士論文は23歳の時の「カントの自然的単子論にもとづく物質の本質」。ヨーロッパ的秀才。 本作は近代社会における社会的な各種地位の分化と分業の進展について所属先とメンバーたる個人の関係を見ながら…
哲学者・社会学者としての論文や講義録にもジンメル節と言っていいようなことばの選択が匂い立つことはままあるのだが、一般読者層に向けて書かれたジンメルの哲学的エッセイは文化や芸術を鮮やかに扱っていて、より一層書き手の個性が際立って、文章自体が…
『基礎情報学 生命から社会へ』(2004)『続 基礎情報学 「生命的組織」のために』(2008)と展開してきた基礎情報学のエッセンスを提唱者本人が可能なかぎりわかりやすくコンパクトにまとめあげた一冊。図版の多用や本文中の具体例あるいは関連コラムで親しみや…
18:30、『社会学』下巻読了後、食料品買い出し、夕食、晩酌。『文化論』読みながら21:00くらいに寝落ち。4:30くらいに目が覚める。予定の90%くらいの進捗だが、なんとなく満足しているような幸福感とともに目覚める。めずらしい。自己満足…
論文とエッセイ、科学と芸術、学問と商業文芸。社会学者としてのゲオルク・ジンメルの本業は私が提示したカップリングの前者、著述家としての本質は後者にあるのかなと考える。位置づけがしづらい人物である分、学問的評価が若干厳しめに推移しているような…
ゲオルク・ジンメルもドゥルーズ=ガタリもちゃんと読んでいるわけではないので一読者の勝手な印象でしかないのだが、ジンメルはおだやかなドゥルーズ=ガタリ(且つガタリ弱め)のような感じがしていて、咀嚼するのに大変なところはあるものの、いろいろお…
三日連続の休みなので、社会学をまとめて読もうかと・・・ 二クラス・ルーマンも候補にあったけれど、資料が集まらず、ゲオルク・ジンメルに決定。 1.『社会的分化論 社会学的・心理学的研究』(1890) 石川晃弘, 鈴木春男 訳 (中央公論社 世界の名著 47 196…
読み通したあとに「訳者あとがき」でもともと点字出版のために書かれたテクストだったということをはじめて知り、哲学史にしては変な配分だなと思いつつ読んだ文章の意味合いを、あらためて想像してみようと思った。 原書のタイトルは『盲人のための哲学概論…
哲学と芸術と政治を語ったメルロ=ポンティ晩年の著作。五十代前半で逝ってしまった詩的哲学者の存在が惜しい。死ねないんじゃないかと思うくらい長生きしたときにどんな文章を書いてくれていたかと想像すると、その存在の大きさに尊敬の念が湧いてくる。サ…
数学が苦手な社会学者古市憲寿が狂言回しとなって、統計分析の初歩をレクチャーしてもらう対談形式の一冊。用語に馴染むというところからはじめてくれているので、敷居がとても低く初心者に優しい。IBMのSPSSを実際に操作しながら統計分析の手法を学んでいく…
訳者でもある上村忠男が読み解くアガンベンの《ホモ・サケル》プロジェクト。高名な方であるのにかかわらず、瑞々しく真摯な執筆の姿勢に頭が下がる思いがする。 アガンベンの仕事をたどるなか、ベンヤミンからスピノザへ導かれるような感触もあったので、ス…