読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

ジョルジョ・アガンベン『思考の潜勢力 論文と講演』(原著 2005, 訳:高桑和巳 月曜社 2009)

アガンベンの単著に入っていない論文の集成の書の翻訳。全21篇。

総ページ数500超で、造本も背表紙の厚さを見るといかついが、アガンベン思想の全体的枠組みを体感するのにはもってこいの著作。いずれかの単著を読み終えたのち、広範な領域にわたるアガンベンの思索と著述活動の方向性を一度しっかりと確認しておくのに適した書物。

近代から現代にかけての思想領域の言説の布置を幾通りか提示しつつ自らの思考を展開していくさまは、最先端に挑んで新たな領域を開拓するとともに今までになされてきた思考の系譜を提示するという、理想的な教師の言説を担っているように感じ取れる。

書物としての外形に怯えずに、現代哲学の実践的入門書としてとりあえず手にしたほうが良いと勧められる一冊。

フーコードゥルーズそれぞれの最後のテクストについて論じた最終掲載論考「絶対的内在」47ページを読んでみて、本書を最初から全篇読んでみるかどうか決めてみるのもよいかと思う。

getsuyosha.jp

【目次】

第一部:言語活動
 もの自体
 言語活動のイデア
 言語と歴史—-ベンヤミンの思考における言語的カテゴリーと歴史的カテゴリー
 哲学と言語学—-ジャン-クロード・ミルネール『言語学入門』
 気分と声
 自我、目、声
 「私」と言うことの不可能性について—-フリオ・イェージにおける認識論的パラダイムと詩的パラダイム

第二部:歴史
 アビ・ヴァールブルクと名のない学
 記憶の及ばないものの伝承
 *se 絶対者と生起
 起源と忘却—-ヴィクトール・セガレンについて
 ヴァルター・ベンヤミンと魔的なもの—-ベンヤミンの思考における幸福と歴史的救済
 コメレル 身振りについて
 メシアと主権者—-ベンヤミンにおける法の問題

第三部:潜勢力
 思考の潜勢力
 現事実性の情念—-ハイデガーと愛
 ハイデガーとナチズム
 記憶の及ばない像
 パルデス—-潜勢力のエクリチュール
 人間の働き
 絶対的内在
 
翻訳者あとがき


【付箋箇所】
28, 32, 36, 39, 41, 49, 50, 62, 82, 98, 104, 116, 119, 120, 126, 138, 142, 145, 158, 175, 177, 192, 194, 210, 220, 223, 225, 228, 236, 245, 248, 254, 257, 291, 308, 315, 328, 344, 350, 364, 367, 380, 398, 401, 402, 404, 408, 410, 414, 431, 434, s436, 441, 446, 457, 461, 483, 490, 493, 505


ジョルジョ・アガンベン
1942 - 

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高桑和巳
1972 - 

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