読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

レーモン・クノー『文体練習』(原著 1947, 1973 水声社 レイモン・クノー・コレクション7 訳:松島征+原野葉子+福田裕大+河田学 2012)

言語遊戯が苦もなく自然にできるような人が作った作品。99種類用意された文体の見本市のようで、描かれた内容のズレがもたらす現実世界からの浮遊感もついてくる。1ページから2ページ程度の短い文章とはいえ、内容的にはほとんど代わりのないものを99回も退屈させることなく読みすすませる文章技術の高さに感心させられる。言語がもつ奥行きと幅の広さを感じさせてくれるアクロバティックな文芸作品。日本語訳されていても作者の企みは十分伝わってくる。解説を含め翻訳した人たちの熱い思いがこもっているのがわかる一冊。
※本文142ページに対し解説100ページの分量。解説なしで本文だけでも十分味読に耐えるが、解説付きだと各文体に込められた趣向と日本語翻訳に際して選択された方針がよりよく読み取れるようになる。

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レーモン・クノー
1903 - 1976

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