読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

エリザベス・グロス『カオス・領土・芸術 ドゥルーズと大地のフレーミング』(原著 2008, 監訳:檜垣立哉 法政大学出版局 2020)

ドゥルーズの芸術論に依拠しながら建築、音楽、絵画の三領域について展開される論考集。著者独自の主張よりも整理されたドゥルーズの思考の鮮烈さが印象に残る。本論のなかで直接引用されるものと原注で引用参照される章句の数々がそれこそそのまま刺激的で、ドゥルーズの芸術思想についてのすぐれた導入書として使われることで残っていきそうな著作である。『哲学とは何か』『感覚の論理学』『千のプラトー』の三著からの引用がとくに多く、科学と芸術と哲学の関係性についてドゥルーズがどのように考えていたのかというところから、ドゥルーズの思想に比較的すんなりと入っていくことができるのではないかと思わせてくれる。

芸術は、宇宙を他なるものの生成へと開くことである。ちょうど、科学が宇宙を実践的行動へと、つまり有用なものへの生成へと開くことであり、哲学が宇宙を思考の生成へと開くことであるように。芸術とは身体とコスモスのあいだの、ある環境やリズムと別の環境やリズムのあいだの共振や不協和の、もっとも直接的な強度化である。
(第一章「カオス──コスモス・領土・建築」より)

カオスから自分のテリトリーに汲み上げ組み上げして生成していくもっとも直接的で身体的な運動のかたちとしての芸術の姿を取り上げ、その場所に誘っている、開かれた芸術論。

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【目次】
第一章 カオス──コスモス・領土・建築
第二章 振動──動物・性・音楽
第三章 感覚──大地・民衆・芸術

【付箋箇所】
17, 18, 30, 33, 36, 39, 41, 83, 88, 93, 101, 106, 112, 122, 126, 129, 132, 142, 149,176, 189


エリザベス・グロス
1952 - 

en.wikipedia.org

檜垣立哉
1964 -

ja.wikipedia.org