読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

野口米次郎「想像の海」(『夏雲』1906 より)

想像の海

 私は自然と甘い倦怠のうちに一になる。私の魂は徐(おもむろ)に眠へと消えてゆく。ああ、これは地上か或は天国か。夏の香気は自然を甘くし眠らせる、樹木と鳥は微風に耳語する。
 私はいふ、『私は盲目(めくら)で聾(つんぼ)で啞(おし)であります………ああ、私は案内人もなく独り神様へ急いで居ります。』
 おお、永劫よ、幸福よ、私と愛の魂は茫漠たる想像の海で戯れる。
 
(『夏雲』1906 より 原文ママ

野口米次郎
1875 - 1947
 
野口米次郎の詩 再興活動 No.024