読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

監修:千足伸行『フェルメール原寸美術館 100% VERMEER!』(小学館 2018)30×21cm

フェルメール全作品35点(存疑の「聖女プラクセデス」「フルートを持つ女」は含まない)。人気があるため多くの画集が刊行されているフェルメールであるが、原寸美術館はそのなかでも見る価値の大きな一冊に仕上がっている。

6つのテーマ別に集められた作品構成は、見るべきものを比較しながら強調し統一感のあるフェルメールの世界をしっかり浮かび上がらせている。また、小ぶりな作品が多いフェルメールの作品を全点全図で示しながら、主要部分を原寸大、さらには150%や200%の拡大表示で提示することで、画家の表現方法をはっきりと見て取ることができるようになっている。特に「カメラ・オブスクラ」を用いてより正確に見えてきたであろう対象の姿や光の具合を、「光の粒子」とも呼ばれている独特の点描画法を交えて表現しているところが、いくつもの作品に見られるのは、本書の優れた点であろう。「牛乳を注ぐ女」のパンや「信仰の寓意」のタペストリー、「ヴァージナルの前に立つ女」の光を受けた装飾の表現など、19世紀の新印象派の表現よりも鮮やかかつ斬新な取り組みに見える。

同じ室内、同じ装飾品・家具調度や洋服が繰り返し登場するフェルメール作品の、作品ごとに少しずつ異なりながら反響して広がりを見せるいくつもの世界が重なる印象が、千足伸行の短いが要を得た解説からも強調され、新しい見方が提供されているようにも感じる。X線を用いた科学調査により塗りつぶされたものの情報により、フェルメールの引き算の美学のようなものにも触れることができるし、「天文学者」「地理学者」の男性や「赤い帽子の娘」が身につけている上着が当時流行していた日本から輸入された着物であるらしいことなど作画当時の風俗的な情報が各所にっちりばめられていて作品鑑賞を大いに助けもしてくれる。

最後に全35点のサイズ比較が見開きページにおさまる縮尺率で大きさ順に並べられているところは、小さいながらも圧巻といっていい構成で、フェルメール好きなら一度は見ておくべきものであると思わせる。

軽量ながらこの一冊でフェルメールの全体がもれなく見通すことができるのは素晴らしい。とりあえず見るべきもの知るべきことはきちんと押さえてある傑作画集。

www.shogakukan.co.jp

【目次】
フェルメール バロック時代の「小さな巨人千足伸行

第1章 青と黄色のハーモニー
  牛乳を注ぐ女
  真珠の耳飾りの少女
  レースを編む女
  女と召使い
  デルフトの眺望
  ディアナとニンフたち
第2章 光に満ちた輝く白
  窓辺で水差しを持つ女
  天秤を持つ女
  小路
  信仰の寓意
  マルタとマリアの家のキリスト
  ヴァージナルの前に座る若い女
第3章 揺れる恋心
  窓辺で手紙を読む女
  恋文
  ワイングラス
  ヴァージナルの前に座る女
  稽古の中断
  眠る女
第4章 笑う人々
  取り持ち女
  士官と笑う女
  2人の紳士と女
  手紙を書く女
  手紙を書く婦人と召使い
  少女
第5章 音楽のある日常
  リュート調弦する女
  音楽の稽古
  合奏
  ヴァージナルの前に立つ女
  ギターを弾く女
第6章 オランダの繁栄
  真珠の首飾りの女
  手紙を読む青衣の女
  絵画芸術の称賛
  天文学者
  地理学者
  赤い帽子の娘

フェルメール全作品 サイズ比較
フェルメールと風俗画家たちの挑戦 青野純子
作品社版ページ


ヨハネス・フェルメール
1632 - 1675
千足伸行
1940 -