読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

木田元『わたしの哲学入門』(講談社学術文庫 2014, 新書館 1998)

購入して読んだ『反哲学入門』『反哲学史』がどちらも良かったので最寄りの図書館で検索して他のものにも手を伸ばしてみた。

戦後の混乱期に青春時代を過ごした著者が如何に哲学の世界に入っていったか、自身の生涯を振り返りつつ比較的ざっくばらんに書き上げた語り口調の哲学入門書。ドストエフスキーからキルケゴールを経てハイデガーに至りつくやむにやまれぬ探究心の熱量に驚き感動する。20世紀初頭のひとつの代表的な流れの本流に居続けた著者が、プラトン以降の本質存在と事実存在を分けて思考する哲学的伝統に批判的に立ち向かったニーチェハイデガーの哲学をソクラテス以前の哲学者たちの時代からの大きな視点で振り返っている。哲学の発生から哲学的思考の展開と反哲学的思考があらわれ大きな流れとなっていく歴史的展開がコントラスト強めに描き出されているところが理解しやすく印象によく残る。哲学入門として優れているばかりでなく、単純に読み物としても面白い。血が通った哲学史だ。

 

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【目次】
1 哲学のとこが難しいか
2 ドストエフスキーとの出会い
3 『存在と時間』を読みたい一心で
4 カント・ヘーゲルフッサールを読む
5 ハイデガーに即して
6 哲学の根本問題「存在とは何か」
7 存在了解・超越・世界内存在
8 存在と時間
9 存在論の歴史的解体
10 哲学のはじまり
11 自然的思索と形而上学的思考
12 プラトンアリストテレス
13 本質存在と事実存在
14 シェリングキルケゴール
15 形而上学の展開
16 主観性の哲学・カント
17 カントからヘーゲル
18 ニーチェ力への意志

【付箋箇所】
61, 70, 105, 108, 126, 130, 138, 141, 181, 184, 204, 211, 229, 236, 248, 249, 259, 269, 280, 282, 284, 312, 314, 329, 342, 347, 358, 363

木田元
1928 - 2014

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