20世紀前半から中盤にかけての現象学の大きな流れを身をもって受け止めた著者木田元が著した凝縮度の高い概説入門書。半世紀以上前に書かれたものなので、もはや古典と言ってもいい作品ではあるが、中身は現役、まだまだ一向に色あせる気配はない。
ドイツでフッサールがのろしを上げ、ハイデガーが独自に展開した後に、フランスのサルトルとメルロ=ポンティにそれぞれ別経路別路線で受けつがれていった、現象学の各自の思索展開を、それぞれエッジを利かせて描き出している。比重としては、創始者であるフッサールと、身体に重きを置いて思索を重ねたメルロ=ポンティに多くを置いている。フッサールからメルロ=ポンティへの路線が現象学の基本路線と捉えている著者の考えがストレートに出ている結果であろう。
知覚の場である身体を通して世界が現われるとともに意識もまた現われるという関係性をしっかりと伝えてくれていて、本書を読みすすめていくとメルロ=ポンティの著作がとても気になってくる。
【目次】
序章 現象学とは何か
Ⅰ フッサールと時代の思想的状況
Ⅱ 超越論的現象学の展開 ──フッサール成熟期の思想──
Ⅲ 生活世界の現象学 ──フッサールの後期思想──
Ⅳ 実存の現象学
一 フッサールとハイデガー
二 『存在と時間』
Ⅴ サルトルと現象学
Ⅵ メルロ=ポンティと現象学の現状
一 サルトルとメルロ=ポンティ
二 開かれた現象学
三 生きられる世界への還帰
四 世界内存在としての身体
五 相互主観性の問題
六 現象学と歴史性
終章 何のための現象学か
あとがき
【付箋箇所】
32, 43, 46, 47, 62, 65, 66, 80, 85, 91, 108, 140, 141, 148, 152, 164, 181, 192
木田元
1928 - 2014