読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

プリーモ・レーヴィ『リリス アウシュヴィッツで見た幻想』(原著 1981, 訳:竹山博英 晃洋書房 2016)

アウシュヴィッツから生還したユダヤ系イタリア人作家の短編集。

アウシュビッツでの体験をベースに書かれた「来たるべき過去」グループ、SF的作品が集められた「かつてあった未来」のグループ、現代に生きる人を題材とした「示唆的現在」グループの三つのグループに36の短篇が収められていて、作家プリーモ・レーヴィの作品傾向が一通り見渡せる。

アウシュビッツでの実体験をもとにして書かれた「来たるべき過去」グループの作品が最も緊張度が高く、印象に鮮明に残りやすいものが多いが、ずっと消えない脅迫的な記憶のかたわらで生き延びるためにも書かれた幻想味の強いそれ以外のグループの小説作品には、プリーモ・レーヴィの繊細な感受性と優れた表現力がよくあらわれている。

純粋に楽しめる作品というよりも、一人の作家が書くことによって生きた軌跡をたどるような感覚が残るような作品群であった。

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【目次】

【来たるべき過去】
カパネウス
曲芸師
リリス
弟子
我らが印
ジプシー
聖歌歌手と古参兵
アヴロムの物語
偽装に疲れて
チェーザレの帰還
ロレンツォの帰還
ユダヤ人の王
【かつてあった未来】
穏やかな星
剣闘士
神殿の野獣
免疫異常
渦を巻く熱気
橋を作るものたち
セルフ・コントロール
ある詩人と医師との対話
風の子供たち
逃げてゆく傑作
いとしい母さん
しかるべき時に
タンタル
沼地の姉妹
ある遺言
【示唆的現在】
魔術師
分子の挑戦
グエッリーノの谷
本の娘
お客
暗号の解読
週末
魂と技師
短い夢

【付箋箇所】
38, 86, 94, 237, 277

プリーモ・レーヴィ
1919 - 1987

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