読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

2025-04-01から1ヶ月間の記事一覧

石井恭二『現代文正法眼蔵』全6巻(河出書房新社 1999-2000)

石井恭二による道元の正法眼蔵の現代語訳。巻末にまとめられた簡単な注以外は本文の現代語訳のみという最低限の構成ではあるが、とりあえず全巻通読して全容を感覚的に知りたいという私のような読者にとっては、ぴったりの著作。一冊250ページ前後で、順…

岡﨑乾二郎『頭のうえを何かが』(ナナロク社 2023、キャプション:ぱくきょんみ)

2021年10月30日、66歳になったばかりの造形作家岡﨑乾二郎を襲った脳梗塞、右半身の麻痺の状態からのリハビリ期間に描かれた絵と、そのリハビリ記からなる一冊。中身をほとんど見ることなく作家名だけで手に取った書物で(ちょっと見たところは抽象画のゼロ…

ピエール・グリマル『セネカ』(原著 1981, 訳:鈴木暁 白水社文庫クセジュ 2001)

セネカの三つの側面、宮廷政治家、哲学者、悲劇作者について、小さな書物のなかで、バランスよく、そしてかなり高度な分析を行っている、優れた入門書。特に、悲劇作者の側面が、ほかの側面と関連を持たせつつしっかり取り上げられているところが特徴的かな…

京都大学学術出版会 西洋古典叢書『セネカ悲劇集』全二冊(1997)

シェイクスピアやラシーヌなど後世の西洋演劇に大きな影響を与えたのにも関わらず、哲学者セネカに比べて悲劇作者セネカは翻訳もほとんど見当たらず、日本ではほとんど知られていないが、本訳書はセネカの全悲劇作品(当時のローマのネロの宮廷を扱ったオク…

尾島庄太郎『研究社英米文学評伝叢書 81 イェイツ』(研究社1934, 1980)

イェイツ存命中に戦前日本で出版された研究書。旧字旧かなで横書きという、慣れるまではかなり読みづらい作りの一冊。ただ、内容がしっかりしているのと、詩の訳文が古風で独特な味があるのとで、興味は持続する。イェイツが力を入れた演劇運動についても、…

井筒俊彦英文著作翻訳コレクション『老子道徳経』(原著 2001, 訳:古勝隆一 慶應義塾大学出版会 2017)

井筒俊彦のカナダとイランでの大学研究時代の老子道徳経の英訳テキストからの重訳。井筒俊彦に関心を持つ者以外はなかなか手に取らない書物ではあると思うのだが、訳文のほかに注として別解が載っていたりするところは、老子の解釈に幅があることを示してく…

鈴木大拙『金剛経の禅・禅への道』(春秋社 2020)

分かるものには分かる、分らぬものには分からない、という姿勢で書かれているのだが、あまり反発を感じることもなく読める、鈴木大拙が語る禅の分別知を超えた世界。禅は「人格」を見ることにおいて成就すると説かれているので、分らぬものに対しても著者の…

石井恭二『正法眼蔵の世界』(河出書房新社 2001)

原文対訳『正法眼蔵』全5冊と現代文訳『正法眼蔵』全6冊の仕事のあとに書かれた道元『正法眼蔵』紹介の書。基本的に原文と訳文を併記した各種引用の組み合わせで構成されていて、道元自身の言葉でおおよその思考と体験の形を見て取ることができる。 訳文は…

松本章男『道元の和歌  春は花夏ほととぎす』(中公新書 2005)

道元は鎌倉初期の仏僧で、当時盛んだった和歌の世界は表現の本領ではなく、『正法眼蔵』や『永平広録』などの教学と比べれば、道元の歌そのものの価値はあまり高くはないし、同時代の仏僧の勅撰和歌集収録歌数を比べてみても、道元の和歌は魅力に乏しいこと…

中野京子『「絶筆」で人間を読む 画家は最後に何を描いたか』(NHK出版 2015)

幸福であれ不幸であれ、その人の最大限を示した作家たち。凡庸ではなかった人の業績を見ると、基本的には素直に感動するのだが、その反動もあって凡庸な心はちょっと痛む。 作者もかなりの才能の人。そのうえ辛口で美的センスもユーモアのセンスもある。参っ…

ヴェルフリン『美術史の基礎概念 近世美術に於ける様式発展の問題』(原著 1915, 訳:守屋謙二 岩波書店 1926)

慶應義塾大学出版会から海津忠雄による新訳が2000年に出ているのだが、最寄りの図書館にあるのは古い守屋謙二訳のほうで、それでも最近読んだ美学・美術系の著作(たぶん宮下喜久朗のバロック案内の書籍)の記憶に促されるようにして手に取ってみた。 戦前の…

コーネリス・ドヴァール『パースの哲学について本当のことを知りたい人のために』(原著 2013, 訳:大沢秀介 勁草書房 2017)

個物にとどまらない実在としての普遍、習慣、法則を探究する、科学的な指向性と実効性を強調した思索家の全容に迫る書。徹底した可謬主義者であり反独善主義者であったところのパースが考えた人間像、世界像が、彼の多岐にわたる思考の産物を丁寧に読み解き…