2025-04-01から1ヶ月間の記事一覧
石井恭二による道元の正法眼蔵の現代語訳。巻末にまとめられた簡単な注以外は本文の現代語訳のみという最低限の構成ではあるが、とりあえず全巻通読して全容を感覚的に知りたいという私のような読者にとっては、ぴったりの著作。一冊250ページ前後で、順…
2021年10月30日、66歳になったばかりの造形作家岡﨑乾二郎を襲った脳梗塞、右半身の麻痺の状態からのリハビリ期間に描かれた絵と、そのリハビリ記からなる一冊。中身をほとんど見ることなく作家名だけで手に取った書物で(ちょっと見たところは抽象画のゼロ…
セネカの三つの側面、宮廷政治家、哲学者、悲劇作者について、小さな書物のなかで、バランスよく、そしてかなり高度な分析を行っている、優れた入門書。特に、悲劇作者の側面が、ほかの側面と関連を持たせつつしっかり取り上げられているところが特徴的かな…
シェイクスピアやラシーヌなど後世の西洋演劇に大きな影響を与えたのにも関わらず、哲学者セネカに比べて悲劇作者セネカは翻訳もほとんど見当たらず、日本ではほとんど知られていないが、本訳書はセネカの全悲劇作品(当時のローマのネロの宮廷を扱ったオク…
イェイツ存命中に戦前日本で出版された研究書。旧字旧かなで横書きという、慣れるまではかなり読みづらい作りの一冊。ただ、内容がしっかりしているのと、詩の訳文が古風で独特な味があるのとで、興味は持続する。イェイツが力を入れた演劇運動についても、…
井筒俊彦のカナダとイランでの大学研究時代の老子道徳経の英訳テキストからの重訳。井筒俊彦に関心を持つ者以外はなかなか手に取らない書物ではあると思うのだが、訳文のほかに注として別解が載っていたりするところは、老子の解釈に幅があることを示してく…
分かるものには分かる、分らぬものには分からない、という姿勢で書かれているのだが、あまり反発を感じることもなく読める、鈴木大拙が語る禅の分別知を超えた世界。禅は「人格」を見ることにおいて成就すると説かれているので、分らぬものに対しても著者の…
原文対訳『正法眼蔵』全5冊と現代文訳『正法眼蔵』全6冊の仕事のあとに書かれた道元『正法眼蔵』紹介の書。基本的に原文と訳文を併記した各種引用の組み合わせで構成されていて、道元自身の言葉でおおよその思考と体験の形を見て取ることができる。 訳文は…
道元は鎌倉初期の仏僧で、当時盛んだった和歌の世界は表現の本領ではなく、『正法眼蔵』や『永平広録』などの教学と比べれば、道元の歌そのものの価値はあまり高くはないし、同時代の仏僧の勅撰和歌集収録歌数を比べてみても、道元の和歌は魅力に乏しいこと…
幸福であれ不幸であれ、その人の最大限を示した作家たち。凡庸ではなかった人の業績を見ると、基本的には素直に感動するのだが、その反動もあって凡庸な心はちょっと痛む。 作者もかなりの才能の人。そのうえ辛口で美的センスもユーモアのセンスもある。参っ…
慶應義塾大学出版会から海津忠雄による新訳が2000年に出ているのだが、最寄りの図書館にあるのは古い守屋謙二訳のほうで、それでも最近読んだ美学・美術系の著作(たぶん宮下喜久朗のバロック案内の書籍)の記憶に促されるようにして手に取ってみた。 戦前の…
個物にとどまらない実在としての普遍、習慣、法則を探究する、科学的な指向性と実効性を強調した思索家の全容に迫る書。徹底した可謬主義者であり反独善主義者であったところのパースが考えた人間像、世界像が、彼の多岐にわたる思考の産物を丁寧に読み解き…