2025-06-01から1ヶ月間の記事一覧
禅をベースにした哲学を説いた久松真一の芸術論集。芸術には作り手の境涯が出るというようなことを言っていて、どちらかといえば学問的というよりも批評家的。禅者としての白隠の圧倒的優位を挙げながら、その書と禅画の標準的尺度を超えてしまっている突出…
いまでは芸術家イサム・ノグチの父としてかろうじて知られるくらいだが、一時は国内外で評価の非常に高かった詩人野口米次郎。おもに最初期の詩と国際的詩人として地位を確立するまでの半生を扱った人物伝といったところ。手紙などの一次資料に頼りすぎなの…
平易な語り口だけれども、般若心経・金剛般若経の核心部分をしっかり押さえて教えてくれるところが親切な、講演ベースの著作。 相対的な世界での苦楽の変転と繰り返しを風流と呼んでいるところなどに人柄が現われている。 ほかに、口絵のひとつとして空海筆…
現代の曹洞宗系の禅僧の対談本。 個人の問題解決に実践的に関わることがなくなっていってしまった伝統的仏教を「仏教1.0」、テーラワーダ系の瞑想メソッドやマインドフルネスの手法を説いて人生の活性化に積極的なを「仏教2.0」とし、それでも根本解決には届…
現在40代の俳句実作者の俳句評論。作ることと読むことのバランスがよく、どちらかといえば人をあまり選ばない間口の広い俳句評論集。 自分自身を相対化し、複数視点から世界を重層化してとらえることから生まれる可笑しみを、表現として良しとする俳句の姿勢…
俳句初心者から難しがり屋の俳句批評家までを唸らせる現代作家の句集成。30年前の著作とはいえ、時代を超えた確かな感受性と表現を感じさせてくれる。 ※俳句界での俵万智的存在かも 鬱病の兄の正坐よおジャガの芽ががんぼや体のどこかがもの思う息吸えば吐か…
新興俳句・前衛俳句の俳人評を軸に編集された評論集。 作ることよりも読むことに重心があって、そのなかではじめて知る作家やどこが良いのかあまりピンとこなかった作家や好きではあってもどこがどのように好きなのかうまく表現できない作家について、ポスト…
本質をめぐって、偽なるものとの区別と、解決不能の宣言とについて、歴史的に考察している講義。 繰り返し問われる根源的不安定さと、不安定性に向き合う知を愛するものの誠実さ。 www.h-up.com 【目次】1 プロティノス講義2 ギリシャ哲学 1984‐一1985 ア…
スピノザ、ライプニッツ、カントとイギリス経験論を中心に、ベルクソンの明瞭な視点から説かれている講義。 特にライプニッツのモナド論読解は鮮烈。ライプニッツの世界認識がはじめて納得いくかたちで示されたような感覚を持った。 ベルクソンが乗り越える…
従容録は中国宋時代の禅の公案集で、宏智正覚禅師(1091-1157)が編集した本則と頌からなる「宏智禅師頌古百則」を元に、万松行秀(1166-1246)が示衆(序論的批評)、著語(部分的短評)、評唱(全体的評釈)を加えて構成されている。臨済宗で重視される『…
井筒俊彦のはじめての英文著作の全訳。絶筆の『意識の形而上学―「大乗起信論」の哲学』にいたるまで関心が持続した言語という人間の根源的な領域に、原始からの光を探りながら分け入っていった意欲的な著作。 名づけることで操作統制下に置くこと、言葉を発…
禅仏教の実践と悟りの見地から、主客を超越し絶対的に一なるものに合一し、自我分別のとらわれを捨てたところに出現してくる東洋的無の世界を、プロティノスやエックハルトなどの西洋神秘主義思想と関連づけたり、禅の美術との関連で語ったりするところの論…
「参禅は必ず正師を選んで入室しなければならぬ」、とはいうものの、それはハードルが高いし、そもそも正師かどうか判断できるまでの正しい道というものも確立されてはいない。それでも過去の蓄積のなかから、これはという禅の精髄に触れていくことは可能で…
『一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル』(講談社、2011年)から12年、中小企業経営者として過ごした年月とも重なる期間を経て、持続しながら更新改定していくことの価値を実践的に示した書籍二冊。主張に派手さはないが、過去のテキストを読み直して…
基本的に見開きの二頁に「解説」と「寸話」という構成で禅語を紹介していく著作。著者の悟りの経験をベースにして、やわらかい語り口で禅の教えを説いている。禅の本質でもある人それぞれの資質にあった道に導くことに意を用いた教育的な書物。勉強にも仕事…