神は、人類は、自ら事柄を無の上に据え、自ら以上の何ものの上にも据えはしなかった。ゆえに、私も同じく、私の事柄を私自らの上に据えよう、神と同じく他のすべてを無とする私の上に、私のすべてである私の上に、唯一者である私の上に。
(「私の事柄を、無の上に、私はすえた」より 太字は実際は傍点)
シュティルナーは私に制約を与えるあらゆる社会構造に対して批判の目を向けてその桎梏から逃れることを目指している。批判対象に向ける眼差しは鋭く、あらゆる権威に対して牙を向けるが、一転私の自由を謳うときにその論調は放恣に流れる。私というものが生物的にも社会的にも規定され、決して無の上に据えられた完全自由な存在ではないということには目を向けないためであろう。反権力の言説は魅力的であり必要なものでもあるが、その先のあるべき共生の姿を空想的にではなく描くことはきわめて難しい。
【目次】
上巻:
私の事柄を、無の上に、私はすえた
第一部 人間
Ⅰ 人間生活
Ⅱ 古い時代の人間・新しい時代の人間
1 古い人びと
2 新しい人びと
ⅰ 精神
ⅱ 憑かれた者たち
ⅲ 教権秩序
3 自由人
ⅰ 政治的自由主義
ⅱ 社会的自由主義
ⅲ 人道的自由主義
下巻:
第二部 自我
Ⅰ 自己性
Ⅱ 所有人
1 私の力
2 私の交通
3 私の自己享受
Ⅲ 唯一者
訳注
解説
【付箋箇所】
上巻:
8, 16, 32, 42, 48, 57, 77, 83, 87, 94, 96, 105, 110, 112, 116, 124, 132, 138, 139, 142, 151, 155, 160, 168, 172, 176, 181, 184, 186, 188, 191, 194, 198, 205
下巻:
8, 18, 19, 40, 56, 78, 86, 105, 123, 135, 139, 142, 144, 146, 150, 153, 158, 168, 172, 173, 186, 203, 217, 231, 233, 254, 267, 271, 286, 291, 292, 298, 301, 309, 314, 323, 347, 351
マックス・シュティルナー
1806 - 1856
片岡啓治
1928 - 2004