読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

守屋正彦『すぐわかる日本の絵画 【改訂版】』(2012)

大人の日本画入門教科書。コンパクトに良くまとまっているという印象をもった。

日本絵画は余白が多い。背景や添え物を入れることを嫌い、単純化を志向する。余白は私たちにとって必要な「間(ま)」であり、空間そのものに意味があるのである。このことは切りとった対象を究極のモティーフとして成長させることにもなる。その過程で優れた装飾性が発揮され、世界でも類のない様式の琳派や浮世絵を創出することともなった。(「やまと心を味わう─日本の絵画の再発見」p7)

東京美術 - 守屋正彦『すぐわかる日本の絵画 【改訂版】』(2012)

目次:
やまと心を味わう─日本の絵画の再発見

日本の絵画のあけぼの

第1章――仏教絵画
飛鳥・白鳳の仏画:おごそかな信仰の世界を描く
天平の絵画:唐文化への憧れを描く
密教絵画:超人的な存在を描く
浄土教絵画:極楽浄土からのお迎えを描く
六道絵ほか:死後の恐怖を描く
神道画:日本古来の神を描く
祖師像・頂相:高僧を描く
近代の仏画:西洋画法も使って仏心を描く
●コラム:唐文化と最先端のファッション
●コラム:モデルと画家の力関係

第2章――絵巻物
物語絵巻:王朝の文学をビジュアルに描く
説話絵巻・戯画絵巻:仮想の世界を自在に描く
縁起絵巻:寺や神社の由来を描く
高僧伝絵巻:聖なる人の人生を描く
合戦絵巻:勇敢に戦う武士を描く
近・現代の絵巻:詞書無しで物語や自然風景を描く
戦後の新古典主義:厳しい批判に耐えて古典を描く

第3章――水墨画
初期水墨画モノクロームで人間や自然を描く
詩画軸:詩を添えて故事や風景を描く
阿弥派と大徳寺派:精神のよりどころを描く
雪舟:オリジナルな画風で自然の景物を描く
水墨画の変貌:少ない筆致で目に見えないものを描く
近代の水墨画:新しい水墨画の技法で描く

第4章――壁画と屏風・襖絵
山水屏風:四季の風物を屏風に描く
狩野派の誕生:新しい時代の気分を描く
狩野永徳:雄渾な武人の心を描く
長谷川派:実物大で自然のディテールを描く
近世風俗画:日々の暮らしと身近な人びとを描く
洛中洛外図:都市の景観を描く
歌舞伎図など:新しく流行した風俗を描く
諸画派:豪壮な気分やわび・さびの境地を描く
江戸と京の狩野派:洗練されてゆく時代を描く
久隅守景と英一蝶:飾らない庶民の暮らしを描く
現代の障壁画:歴史的建築に現代の構想で描く
現代の屏風:雪月花を新鮮な感覚で描く

第5章――琳派文人画・写生画
俵屋宗達:新しい京文化の精神を描く
尾形光琳:古典の物語の一部を新感覚で描く
酒井抱一:装飾的に江戸の粋を描く
池大雅与謝蕪村:教養人の心の世界を描く
浦上玉堂と渡辺崋山:対象の内なるものまで描く
円山四条派:想いを託して身近な景色を描く
近代の文人画:世俗に動じない孤高の姿を描く
●コラム:江戸中期の異色の画家たち:長沢芦雪伊藤若冲

第6章――浮世絵
肉筆浮世絵:身近な町の美人を描く
初期浮世絵:庶民の楽しみを描く
錦絵の誕生:華麗な色彩で風俗を描く
歌麿写楽:憧れの人をアップで描く
北斎と広重:なつかしい風景と旅情を描く
歌川国芳:奇抜なアイデアで面白いものを描く

第7章――洋風画
第一期洋風画:洋風画法で西洋の人びとを描く
第二期洋風画:陰影をつけて日本の風物を描く
洋風画の浸透:伝統的な主題を洋画法で描く
「洋画」への序章:徹底した写実でものを描く
●コラム:西洋文明への好奇のまなざし:南蛮屏風

第8章――近代の日本絵画
日本画」の誕生:新しい表現で自然を描く
日本画の発展:緻密な描写で静物や歴史を描く
京都の日本画:歴史と伝統の地で近代を描く
明治期の洋画:本格的な洋画の技法で光を描く
洋画の発展:ロマンティックに歴史や自然を描く
洋画の多様な展開:さまざまな画風で描く

あとがきにかえて─西洋を驚嘆させた日本の絵画

 

守屋正彦
1952 -