読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

ゲオルク・クニール+アルミン・ナセヒ『ルーマン 社会システム理論』(原書1993,訳書1995)

かなりきっちりとルーマンの社会システム理論を紹介してくれている入門書。教科書としても使われているようで、この手の書籍にしてはかなり重版されている。さきにオートポイエーシス(自己創出、自己産出)論を少しかじっていないと飲み込みにくいかもしれないけれど、取り組みがいのある良書。社会学者であるルーマンが脳や意識について語るのは、有機体システム、免疫システム、神経システムや社会的なコミュニケーションシステムと同様にオートポエティックなシステムとして捉えているためで、その一貫した理論適用はたいへん刺激的。「構造的カップリング」という、別々に作動するシステム間の関係性をあらわす概念の鋭さにも目を見開かせられる。

意識と脳は、まったく重なり合うことなくはたらいている。両者は融合しない。意識と脳とのこうした特殊な関係を、ルーマン構造的カップリング(struktuelle Kopplung)という概念で言い表している。構造的にカップリングされたシステムは、互いに依存しあっている。――しかも同時に、互いに他に対して環境であり続けている。だから、構造的カップリングという言葉は、システム間の一定の依存性/非依存性の関係を表しているのである。意識と脳との関係について言えば、これは次のようなことを意味している。すなわち、いかなる意識も、それに対応する脳の活動がなければ、そのオートポイエーシスを継続することができないにもかかわらず、あるいはもっと適切な言い方をすれば、まさにそうであるからこそ、意識と脳とは互いに別々にはたらくのである。
(Ⅲ 社会システムの理論 「心的システムのオートポイエーシス」p73 太字は実際は傍点)

Ⅴ章の「社会診断」では、リスク社会論もあり、内容は豊富。

 

目次:
Ⅰ 序論
Ⅱ 学際的パラダイムとしてのシステム理論
Ⅲ 社会システムの理論
Ⅳ 社会の理論
Ⅴ 社会診断

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ニクラス・ルーマン
1927 - 1998

ゲオルク・クニール
1960 -
アルミン・ナセヒ
1960 -
舘野受男
1929 -
池田貞夫
1931 - 2008
野﨑和義
1953 -