読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

ヨハン・ホイジンガ『レンブラントの世紀 17世紀ネーデルランド文化の概観』(原著 1941, 訳:栗原福也 創文社歴史学叢書 1968)

『中世の秋』(1919)『ホモ・ルーデンス』(1938)を著したオランダの歴史学者ヨハン・ホイジンガが、第二次世界大戦下、自国オランダがナチス・ドイツの占領下にあった時、自国民を勇気づけようとして著したとされる著作。

絶頂期にあったオランダ17世紀を、政治、宗教、経済、文化、芸術の各側面から描き出し、ヨーロッパのなかにあって独自の性格をもつオランダの国民性を顕彰している。他国がバロック的な荘重で壮大な強固な階層性を志向いていたのに対して、オランダは中世の名残を残した自治的な統治体制をもとに自由で市民的な文化が花開いたことに繰り返し言及している。特に振興商人層をパトロンとして発展した造形芸術、なかでも油彩画と銅版画についての言及から、オランダの特性がよく語られているという印象が残った。フェルメール、フランス・ハルス、レンブラントは誰もが知っているオランダの画家であるが、画題や技術的傾向に見られる素朴さや親密さについて強調しているところは妙に新鮮で、それらの画家たちの作品にあらためて向かわせる力をもっている。

文学作品についても絵画作品と同程度の分量をもって分析紹介されているが、この分野に関してはあまりの素朴さが禍してか、今でも国外にまで名が知られているような人物は見当たらず、それも含めてオランダ的ということの内容が読者には伝わってくるのではないかと思う。

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【付箋箇所】
30, 85, 114, 131, 153, 156, 163, 167,  174

ヨハン・ホイジンガ
1872 - 1945

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栗原福也
1926 - 2016

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