読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

『季題別森澄雄全句集』(角川学芸出版 2011)

1995年、76歳、脳溢血に罹り左半身に麻痺が残る。
そののち15年、「常臥し」を多用した作句を読みつづけるのは、正直辛いところがあるが、作者の辛さに近くあることを思いながら読むと、それ以前の句とのコントラストが貴重なものに思えてくる。
とくに、ひときわ鮮やかで得意としていたであろう妻恋いの句は、先立たれた喪失感とともに作られた後年の句とのあいだとで情感の落差が大きく、心動かされ強く印象に刻まれるようであった。
※本書は生年中の句作の季題別編集となる作品集であるために、句ごとの相互関係はドライであるが、句集本来の暦年編集ではよりエモーショナルな相を伺えることになるのではないかと思う。繰り返しになるが、晩年の身体の自由が利かない期間が長かったことは、どうにもならないことではあるが、残念なところである。

私撰20句

夜の更けてひとりとなれば亀鳴くよ
紅梅に牛つながれて泪ぐむ
ひとりにて見るには惜しき桃の花
仰ぎゐて我になりゆく夏の鷹
炎天に聾ひてをり蟻地獄
空を見て一鳥をらず夏野かな
夕青田山羊ゐ給へり主(しゅ)のごとく
くらがりに母の晩年水田見ゆ
妻はいま金色如来秋澄みぬ
寝ころんで蹠いつしか秋の風
豊年や女が乗れるオートバイ
鵯鶲朱をつくしたる木の実あり
歯がなくて無花果を食ふ仏なり
紅葉の中杉は言ひたき青をもつ
死ぬ病得て安心(あんじん)や草の花
焚火して年の行方を見てをりぬ
除夜の妻白鳥のごと湯浴みをり
寒鯉を雲のごとくに食はず飼ふ
枯るる貧しさ厠に妻の尿きこゆ
車椅子わが行く方を恵方とす

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現代俳句データベース 森澄雄66句 - 現代俳句協会

森澄雄
1919 - 2010

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