読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

清水亮『よくわかる人工知能 最先端の人だけが知っているディープラーニングのひみつ』(2016)

対談メインの2016年当時最先端の人工知能関連情報。なかには出版後に詐欺罪で逮捕されたひとも含まれるが、それも含めて興味深く読み進めることができる。ほかには図版とNOTE(用語解説)が優れている。パワポ資料を作りなれているASCII編集者の面目躍如といったところか。私のお勧めは一章と四章。

すごく高度に認知的な機能と、進化に由来する本能や感情がうまく組み合わさって出来ているのが生命なんです。つくづく生命ってすごいなと思いますし、そういうところを再現するのは、僕はめちゃくちゃ難しいと思うんですよね。
ですから、人間のような知能をつくる試み自体は、僕はあまり意味がないと思っています。知能の仕組みを産業的に使うことは相当進むと思うんですけど、”人間のようになる”というのは否定的です。(p57 松尾豊)

 

脳のどこを損傷しても”意識”があるから不思議だっていう人がいるんですけど、それはそうで、”意識”がみつからないのは、いろんなところに薄~く分散してあるからですよ。
脳の中にあることは間違いなくて、どこにも偏在していないってことも間違いないわけです。曖昧な意思決定の話もそうです。「なんとなくこっちがいいから、自分でもわからないけど意志決定する」みたいなことがあるじゃないですか。あれはもう、”意識”が論理的だと考えると説明できないけど、受動意識だったら当然、簡単に説明できますよね。(p207 前野隆司の「受動意識仮説」)

 

心ってすべては電気信号なんですよ。
悲しい時と楽しい時で、電気信号が変わるんですね。たとえば、楽しいときの電気信号さえわかってしまえば、悲しいときにその電気信号をおくれば楽しくなるんです。人間はコントローラーみたいなものに操られていて、そのコントローラーがホルモンなんです。そのホルモンバランスによっていろんなものがどんどん変わってくる。そうするとホルモンバランスを変えると、さっきおっしゃったとおり、気持ちが変るじゃないですか。それってやっぱり電気信号が変っているんですね。実は、外から電流を脳の特定部位に流しても変わるんですよ。(p226 満倉靖恵)

私は限界を積極的、肯定的に示してくれる議論が好きなので、上記のような発言に引き付けられる。

 

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内容:
第一章 人工知能と深層学習のいま
 対談 松尾豊(1975 - 東京大学大学院 工学系研究科 技術経営戦略学専攻 特任准教授)
第二章 深層学習はビジネスをどう変えるか?
 対談 岡島博司(1965 - 元トヨタ・リサーチ・インスティテュート エグゼクティブ・リエゾン・オフィサー)
 対談 村上真奈(NVIDIA社ディープラーニングソリューションアーキテクト兼CUDAエンジニア)
第三章 最新のAIはどこまでできるのか - インテリジェント・オブ・シングス 知性化するモノの正体 -
 対談 田島玲(ヤフージャパン研究所 所長)
第四章 人工知能は意識を持つのか?
 対談 前野隆司(1962 - 慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 研究科委員長・教授)
 対談 満倉靖恵(慶應義塾大学 理工学部システムデザイン工学科 准教授)
第五章 ディープラーニングの先にあるもの
 対談 齊藤元章(1968 - PEZY Computing 創業者・代表取締役社長)

 

清水亮
1976 -