読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

4連休なのでジェイムズ・ジョイスの『フィネガンズ・ウェイク』を柳瀬尚紀の訳で読んでみる その8:何も書かれていない書物と「フィネガンズ・ウェイク九句 六の段」

原典ノンブルによる進捗:455/628 (72.5%)

文学の世界では「何も書かれていない書物」という極限があって、一方にマラルメの『骰子一擲』、もう一方にジョイスの『フィネガンズ・ウェイク』がある。極限まで削られた言葉と極限まで多層化されベクトル積算で圧縮化された言葉。方向は別を向いているがともに強圧力下にある言葉とそのゆらぎに出会うことができる。通常気体である酸素が強圧力下では個体化し金属化するという。「何も書かれていない書物」というのは、個体酸素のように現実に存在しているが、使用法はよくわからない圧倒的な存在である。


フィネガンズ・ウェイク九句 六の段】

((阿歩ら止)か)(コブラパーク)の土産物
うわすべる叡智界では(海鼠詩)を 
(堊)色の灰汁強ければ(悪)の華
■ これより第Ⅲ部
おかしいにちゃんちゃらつける(語時世だ)
写経室(しめしめさばさば)(真珠がたい)
(忖択肢)(束縛され)て(巻きめくれ)
図書館で捕らえた蝶はロハにして
寝落ちして(アー面くらう)低気圧
(夜鷹声(モアパーク! モアパーク!))黙示かな


ジェイムズ・オーガスティン・アロイジアス・ジョイス
1882 - 1941
フィネガンズ・ウェイク』 Finnegans Wake
パリ、1922 - 1939
柳瀬尚紀
1943 - 2016