読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

西下経一校訂『後拾遺和歌集』(第四勅撰和歌集 白河天皇下命、1086年成立 岩波文庫 1940) 【八代集を読む その3】

第三勅撰和歌集拾遺和歌集』から80年、若き藤原通俊が撰者となって編まれた、新時代を感じさせる第四勅撰和歌集紀貫之や凡河內躬恒や伊勢といった三代集の芯を形づくっていた『古今集』を代表する歌人の歌は採らず、三代集以後の歌人、とくに女流歌人の歌を多く収めた詞華集。全一二一八首。収録数が多いのは、和泉式部67首、相模39首、赤染衛門32首、能因法師31首、伊勢大輔26首、ほかに公任、長能、頼宗、元輔、能宣、良暹らがつづき、時代の移り変わりを体感できる。和泉式部などの社交や技巧には到底おさまらない情念のこもった力強い詠いぶりが、新奇且つ鋭利に読む者の心をとらえたり、或いは逆に嫌悪させたりする。荒ぶる心の、より直接的ではあるが込み入ってもいる表出の突風が、ところどころで吹いている。

世中を思ひすてゝし身なれども心よわしと花に見えける 能因法師

すてはてんと思ふさへこそ悲しけれ君になれにし我身と思へば 和泉式部

 

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【付箋歌】
48, 59, 98, 117, 120, 166, 214, 258, 311, 266, 433, 551, 566, 574, 597, 612, 669, 672, 680, 712, 755, 756, 763, 770, 790, 844, 940, 984, 1014, 1096, 1164

西下経一
1898 - 1964