読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

松田武夫校訂『三奏本 金葉和歌集』(第五勅撰和歌集 白河院下命、1126年成立 岩波文庫 1938) 【八代集を読む その4】

第四勅撰集『後拾遺和歌集』(1086年成立)につづき白川院の下命による勅撰和歌集源俊頼が撰者となり編纂された全10巻、六五〇首の詞華集。ほかの勅撰集と異なり、下命者の奏覧に供されたものが、二度編者のもとに返され改訂されることになった。三度目の奏覧で白河院のもとに納められたものが正式な勅撰集であるべきものであったが、この三奏本は清書前の俊頼自筆の稿本で、控えがなかったために、二度目の奏覧本(二度本)が流布本として多く読まれることとなった。岩波文庫版では三奏本を本編とし、三奏本に含まれない二百首余(数えたところでは二一五首)が付録として収録されている。二度本と三奏本とは編集内容が異なるため、双方に採られた歌であっても並び順が異なり、同じ歌でも二度本で読むと若干異なる印象を持つ場合もありそうなのだが、今回は読み比べることはしていない。
主な歌人源俊頼源経信藤原公実藤原忠通,源顕季,堀河院など。当代歌人中心の選択傾向に対して、同時代歌人や後代歌人から芳しくない評が出ることも多い家集。個人的な印象では、女性歌人の割合が少ないこともあってか、妖艶というよりも冷え寂びた感触が強めに残る。

月夜よみ瀬々の網代による氷魚は玉藻にさゆる氷なりけり 源経信

世の中は憂き身にそへる影なれや思ひすつれど離れざりけり 源俊頼

 

www.iwanami.co.jp

【付箋歌】
三奏本:
83, 263, 266, 278, 306, 434, 503, 524, 572, 573, 583, 609, 612, 632, 
流布本収録歌(付録、国歌大観の番号):
64, 66, 185, 225, 270, 477, 571, 711


松田武夫
1904 - 1973