結構重厚。
1970-71年におけるドイツのマールブルク大学での十牛図に関する講義をベースに、以後30年の経験を踏まえて新たに説き直した十牛図解説本。
中心となる「十牛図を歩む」は、中国北宋時代の廓庵禅師の図と頌と弟子慈遠の序を丁寧にたどりながら、禅の神髄に読者を導こうとする意気がゆったりと伝わってくる。廓庵禅師以外の「十牛図」を引いて、絵自体が意味するところをより詳細に解き明かしたり、禅語を詳しく解説しながらその語に関連する歴史上の禅師たちのふるまいを紹介していたりして、多角的に「十牛図」に接する道を用意してくれている。
「坐禅と参禅」は座禅をすることの意味と方法を説き、「参禅記」では著者と交流のあるドイツ人女性の参禅体験記を翻訳紹介することで、「室内」と呼ばれる禅師指導下での公案による得悟までの様子をリアルに伝えている。
「参禅記」に記された悟りに至るまでの過程は、実戦経験のない者の視点から見れば、常識レベルを超えた異常体験のように見える部分もありはする。ただ、人生において解決しようのない状況に追い込まれたひとりの人物が実存をかけて禅を選択し、師となる禅者が全身で新たな境涯に導こうとしている姿には、ただただ圧倒される。とりあえず座ってみなさいという感じの禅紹介書が多い中で、参禅が容易なことではないということを伝えてくれただけでも、本書は存在価値が大きいのではないかと思った。
【付箋箇所】
9, 13, 22, 24, 32, 37, 41, 43, 46, 50, 52, 55, 56, 60, 70, 71, 79, 101, 103, 107, 108, 114, 124, 147, 151, 157, 175, 186, 193, 195, 196, 199, 202, 207, 210, 231, 238, 266, 269, 281, 283, 284, 294, 298, 299, 317
上田閑照
1926 - 2019