仙というか狂というか惚というのか、俳人しか到達しえないような表現の領域にいる人。飄逸なんだが本人的には大真面目で、まったく衒いが感じられないところがよい。幼心のままにある無為の遊境であり、また戦境であろう。ジャンルを超えて近い人を挙げるとすると画家熊谷守一になるのではないかと思う。
私撰15句
錠剤を噛み碎き服む薔薇の前
穀象とあらぬあたりに逢ひにけり
死に切らぬうちより蟻に運ばるる
甘藍の縦断面に瞠目す
惜しみなく過半を缼きし蜥蜴あり
先人は必死に春を惜しみけり
怪しかる暦なれども買ひにけり
怪(け)の物かあらぬか大き柏餅
斑猫とたまたま興を共にせり
向日葵のうつ伏す花を蔑めり
仰向けの兜蟲をば傍観す
毒茸に嗤はれたれば打擲す
冬瓜と老いて友誼を深めけり
老身と知りてか蟻の登り来し
相見つつ芒も我も惚けけり
相生垣瓜人
1898 - 1985
熊谷守一
1880 - 1977