読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

2020-12-01から1ヶ月間の記事一覧

ゲオルク・ジンメル『社会学』(原書 1908, 白水社 1994 上下二巻 居安正 訳)最初から全部読まなければならないという思いを捨ててしまえば、補説をつまみ食いするだけでも十分楽しめ役に立つジンメルの論考(「多数決についての補説」あたりが特におすすめ)

分厚い本に向き合うにはどうしても決意とかが必要になってくる。買ってしまったら余計にそうだ。全部読まないといけないし全部理解しないといけないという圧を自分にかけてしまっている。そうなると息苦しさや求められてもいない自己採点のループに陥ってつ…

ゲオルク・ジンメル『文化論』(阿閉吉男編訳 文化書房博文社 1987)ジンメル50歳台の後期思想「生の哲学」が根底に流れる熱量の高い文化論

50歳を越えてからのジンメルが生の展開や発展や開化や更新ということを強く説くようになったのは、ニーチェに傾倒した思想的背景が前面化してきたのに加え、老いを迎え病も得やすくなった自分自身を鼓舞する意味もあったのではないかと勝手に想像しながら…

宮下規久朗『モチーフで読む美術史2』(ちくま文庫 2015) 喪失者による虚飾のない仕事。人の心を動かす美術の力へのまなざし。

2013年の『モチーフで読む美術史』につづく文庫版オリジナル著作第二弾。あらたに50のモチーフから美術作品を読み解いていく、小さいながらも情報量の多い作品。 著者である宮下規久朗は、前作『モチーフで読む美術史』の校了日に一人娘を22歳の若さ…

ゲオルク・ジンメル『社会的分化論 社会学的・心理学的研究』(原書 1890 石川晃弘, 鈴木春男 訳 中央公論社 世界の名著 47 1968, 中公クラシックス 2011) 分化と分業による個人への非関与が基本姿勢となる近代社会のなかでの自由と孤独というジンメル的思考のはじまりの書

ジンメル32歳の時の処女作にして出世作。ちなみに博士論文は23歳の時の「カントの自然的単子論にもとづく物質の本質」。ヨーロッパ的秀才。 本作は近代社会における社会的な各種地位の分化と分業の進展について所属先とメンバーたる個人の関係を見ながら…

ゲオルク・ジンメル『ジンメル・エッセイ集』 川村二郎編訳 (平凡社ライブラリー 1999)アドルノやベンヤミンに影響を与えたエッセイのスタイルと切れ味の良い文章

哲学者・社会学者としての論文や講義録にもジンメル節と言っていいようなことばの選択が匂い立つことはままあるのだが、一般読者層に向けて書かれたジンメルの哲学的エッセイは文化や芸術を鮮やかに扱っていて、より一層書き手の個性が際立って、文章自体が…