読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

長田弘 『詩の樹の下で』(2011)

あらゆるものには距離があるのだ。あらゆるものは距離を生きているのだ。
(中略)
何もないんだ。雲一つない。近くも遠くもないんだ。無が深まってゆくだけなんだ、うつくしい冬の、窮まりのない碧空は。
幸福? 人間だけだ。幸福というものを必要とするのは。
(「冬の日、樹の下で」p82)

 樹の生きる時間と空間にいっとき憑依させていただく。放心してまた戻る。我に返る。かすかな再生が起こっているのかもしれない。

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長田弘
1939 - 2015