連続シンポジウム「激動する世界と宗教 私たちの現在地」の第三回講演録。パネラーは池上彰、佐藤優、松岡正剛、安藤泰至、山川宏。
第Ⅰ部の対論の「有用性の論理」についての議論が印象に残る。
遺伝子組み換えの大豆や小麦には抵抗感があるのに、山中先生のiPS細胞には拍手喝采する。これは論理的に非常にザラザラした印象を受けます。(中略)そこには有用性の論理が出てくるのです。「私たちにとって利益になる」というときの、「私たち」の主体はどこにあるかという問題でもあります。(佐藤優 p77)
(西部邁、マルクス娘夫婦、トロツキー翻訳者対馬忠行、資本論訳者岡崎次郎らの自殺・失踪のはなしを受けて)人間の生や死を、功利主義的、経済合理性で考えていいのかどうか、という問題が出てきます。(佐藤優 p79)
これからどのように社会が進んでいこうと、「有用性の論理」に批判がなされようと、有限な資源のなかでの生き残り競争はなくなることも和らぐこともなさそうなところは憂鬱だ。
内容:
開会の辞
宗教の正体に迫りたい(松岡正剛)
いま宗教とは(池上彰)
人間の思考と魂の根底に迫る(佐藤優)
宗教は生命操作に向き合えるか?(安藤泰至)
人工知能と宗教(山川宏)
第Ⅰ部 対論
宗教はAI時代に誰の心を救うのか (池上彰・佐藤優)
第Ⅱ部 基調報告
生命操作時代における「いのち」―いのちから医療と宗教を問う(安藤泰至)
遍在化する人工知能は宗教に何をもたらすのか(山川宏)
第Ⅲ部 総合討論
私たちは全体性を振り返ることができるのか(松岡正剛)
パネルディスカッション (松岡正剛・池上彰・安藤泰至・山川宏・佐藤優)
第Ⅳ部 総括
特別座談会(池上彰・佐藤優・松岡正剛)