読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

永田生慈『もっと知りたい葛飾北斎 生涯と作品』改訂版(2019)

画狂老人卍、葛飾北斎、享年90。
75歳の時に書いた、絵本「富嶽百景」初編の跋文がいかしている。

己(おのれ)六才より物の形状(かたち)を写(うつす)の癖(へき)ありて
半百の此(ころ)より数々(しばしば)画図を顕(あらわ)すといえども
七十年前画(えが)く所は実に取(とる)に足(たる)ものなし
七十三才にして稍(やや)禽獣虫魚の骨格草木の出生を悟し得たり
故に八十六才にしては益々進み
九十才にして猶其(なおその)奥意を極め
一百歳にして正に神妙ならん歟(か)
百有十歳にしては一点一格にして生(いけ)るがごとくならん
願くば長寿の君子予が言(こと)の妄(もう)ならざるを見たまふべし

50才から本格的に絵を発表し、70才までに画いたものは取るに足りないものばかり、と言っている。その気骨に胸が熱くなる。
50才までの読本挿絵や浮世絵作品など、数のうちにも入ってないという潔さ。そのうえで85才で猫一匹まともに画けないと娘の前で涙を流したという純粋さ。灼熱の画狂の世界。

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目次:
〈増補版〉巻頭特集 冨嶽三十六景
プロローグ 誕生・幼少年期(1-19歳)
第1章 習作の時代・春朗期(20-35歳)
第2章 宗理様式の時代(35-45歳)
第3章 読本挿絵と肉筆画の時代(45-52歳)
第4章 絵手本の時代(53-70歳)
第5章 錦絵の時代(71-74歳)
第6章 肉筆画の時代(75-90歳)
エピローグ 北斎、死す
浮世絵豆知識

葛飾北斎
1760 - 1849
永田生慈
1951 - 2018