読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

ベルナール・スティグレール『技術と時間1 エピメテウスの過失』・『技術と時間2 方向喪失 ディスオリエンテーション』・『技術と時間3 映画の時間と〈難-存在〉の問題』(監修:石田英敬、訳:西兼志)

『技術と時間』はベルナール・スティグレールの主著。予定されていた巻数には届かずシリーズ的には未完だが、各巻は独立して読める。日本語訳されているほかの著作と比較すると、ほかの著作が講演やエッセイをベースにした一読了解可能な語り口にくらべ、いかにも哲学書という厳密さを志向している濃密な文体で、読み取っていくには丁寧さが必要になってくる。また、フッサールの『内的時間意識の現象学』とハイデガーの『存在と時間』をスティグレールの師であるデリダ差延の概念をおおいに参考にしつつ批判的に読み解きながら自説を展開していくところをより良く理解するためにはやはり参照先のテクストに関してそれなりに自分自身の理解がないとあやしいし、鵜呑みにしてしまっていいものかという自分の読みに対する疑いも相当出てくる。ほかにはシモンドンの個体化論、アンドレ・ルロワ=グーランの先史時代研究と言語文化論の理解を取り入れながら読み込んでいったほうがよいだろう。アナログ時代の記憶媒体である写真についての刺激的な論考『明るい部屋』を残したロラン・バルトへの愛着についても気になるところである。

たとえば今の時代、生成AIにスティグレールの『技術と時間』の概要を教えてくださいという問いかけをすれば、当たり障りのないものではあるが、それなりに妥当な要約が瞬時に返ってくるが、そこには自分で読んだときに感じる消化しきれない何かは存在しないし、自分なりに問題化し自ら読みの精度を高めていかねばならないという衝迫感もでてこない。本を読めば要約からはこぼれ落ちてしまう記述の痕跡が自分の意志とは少し離れたところで残るもので、それが次の読書を呼んでいく。本が本を呼ぶのである。本書シリーズは比較的集中した著作群を繰り返し参照しているところから、自分の学びを拡げていく拠点になる著作になってくれるのではないかと思った。

 

『技術と時間1 エピメテウスの過失』(原著 1994, 法政大学出版局 2009)

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【目次】
第1部 人間の発明
 序
 第1章 技術進化の諸理論
 第2章 技術論理と人間論理
 第3章 「誰」?「何」?人間の発明
第2部 エピメテウスの過失
 序
 第1章 プロメテウスの肝臓
 第2章 既に現に
 第3章 「何」の脱離
【付箋箇所】
15, 20, 23, 42, 46, 67, 70, 90, 104, 128, 136, 139, 141, 160, 162, 165, 166, 171, 172, 173,  176, 179, 181, 188, 208, 223, 272, 279, 285, 293, 296, 301, 304, 318, 333, 336, 341, 348, 375, 381, 382, 430

 

『技術と時間2 方向喪失  ディスオリエンテーション』(原著 1996, 法政大学出版局 2010)

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【目次】
第1章 正書法の時代
第2章 方向喪失の発生
第3章 記憶の産業化
第4章 時間対象と過去把持の有限性
【付箋箇所】
1, 66, 83, 94, 99, 100, 115, 137, 142, 151, 154, 175, 181, 211, 219, 254,  263,  269, 278,  288, 292,  312, 340, 360, 369, 376, 387, 390, 391, 394

 

『技術と時間3 映画の時間と〈難-存在〉の問題』(原著 2001, 法政大学出版局 2013)

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【目次】
第1章 映画の時間
第2章 意識の映画
第3章 〈我〉と〈我々〉─アメリカの取り込みの政治学
第4章 われわれの教育施設の困難
第5章 差異を生み出すこと
第6章 科学技術と複製=再生産
【付箋箇所】
9, 12, 19, 30, 56, 66, 91, 94, 97, 104, 108, 112, 116, 117, 122, 127, 135, 137, 149, 154, 156, 160, 163, 170, 172, 174, 232, 252, 295, 298, 312, 313, 328, 336, 341, 345, 351, 358, 364, 388, 393, 397


ベルナール・スティグレール
1952 - 2020

ja.wikipedia.org


石田英敬
1953 - 

ja.wikipedia.org

西兼志
1972 - 

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