読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

斎藤幸平の「脱成長コミュニズム」の本二冊 『ぼくはウーバーで捻挫し、山でシカと闘い、水俣で泣いた』(KADOKAWA 2022)『マルクス解体 プロメテウスの夢とその先』(講談社 2023)

現実性が低いからと言って考えることを放棄せずに新たな思考の枠組を継続的に打ち出していくことを自らの使命と考えているのが「脱成長コミュニズム」のみが未来を拓く道であると提言する斎藤幸平のスタンスである。

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『ぼくはウーバーで捻挫し、山でシカと闘い、水俣で泣いた』(KADOKAWA 2022)はコロナ禍で毎日新聞に連載された日本における反資本主義的な活動の現場をおもに訪ね歩いたルポルタージュ的要素の入ったエッセイ集。自分が知らない世界で活動している人たちがたくさんいるということを知るきっかけにはなるが、自分にあった現場でそこに居つづけることができるか継続参加することができるものがあるかどうかというと、そううまいことマッチングするようなものはなかなかない。自分なりに資本主義の競争社会から半ば降りて減速していく覚悟と生活を徐々に創り上げていくのがまずは必要であるというところだろう。

【目次】
第一章 社会の変化や違和感に向き合う
 ウーバーイーツで配達してみた
 どうなのテレワーク
 京大タテカン文化考
 メガヒット、あつ森をやってみた
 5人で林業 ワーカーズコープに学ぶ
 五輪の陰
 男性メイクを考える
 何をどう伝える? 子どもの性教育

第二章 気候変動の地球で
 電力を考える
 世界を救う? 昆虫食
 未来の「切り札」? 培養肉
 若者が起業 ジビエ業の現場
 エコファッションを考える
 レッツ! 脱プラ生活
 「気候不正義」に異議 若者のスト

第三章 偏見を見直し公正な社会へ
 差別にあえぐ外国人労働者たち
 ミャンマーのためにできること
 釡ケ崎で考える野宿者への差別
 今も進行形、水俣病問題
 水平社創立100年
 石巻で考える持続可能な復興
 福島・いわきで自分を見つめる

 特別回 アイヌの今 感情に言葉を

学び、変わる 未来のために あとがきに代えて

【付箋箇所】
4, 5, 26, 27, 29, 37, 40, 41, 44, 46, 51, 52, 53, 54, 59, 60, 68, 75, 81, 85, 86, 88, 91, 92, 96, 98, 100, 103, 106, 107, 108, 115, 116, 120, 123, 124, 126, 128, 133, 141, 156, 160, 161, 166, 168, 171, 173, 177, 178, 180, 183, 186, 190, 194, 197, 200, 202, 203, 204, 206, 209, 212, 216

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マルクス解体 プロメテウスの夢とその先』(講談社 2023)は『大洪水の前に マルクスと惑星の物質代謝』につづく理論書。マルクス晩年の著作に取り込まれることなく終わってしまった研究ノートから地球規模の環境危機を乗り越える循環型の脱成長コミュニズムの世界の可能性を探っている。前資本主義的な競争を抑止する仕組みを持った共同社会の研究を深く読み込み、「協同的富」の潤沢さを基盤とした世界の確立への道を説いているが、現実社会においてどのように展開していくかの方法論についてはまったくといっていいほど取り上げられていないため、実現性について検討するところまでには至っていないというのが正直なところ。民主主義的な選挙が過去よりはひろく実現している世界のなかで反動的ポピュリズムが広がっていることに対抗して、全世界的な脱資本主義的社会をいかに作っていくのか、国家や市場はどのようになっていくのか、もっと具体的なところの見通しを教えてほしいところだったが、そのような書物ではなかった。あくまでもマルクスの『資本論』の延長線上で理論的な足場をしっかり固めていくところを目的にした書物で、経済的概念としての「豊かさ」や「潤沢さ」を「希少性」から切り離して更新することを目指しているところには読むべきものがあるが、具体的実践例などはほかに期待したほうがよい。

【目次】
第一部 マルクスの環境思想とその忘却
 第一章 物質代謝論と環境危機
 第二章 マルクスエンゲルスと環境思想
 第三章 ルカーチの物質代謝論と人新世の一元論批判

第二部 人新世の生産力批判
 第四章 一元論と自然の非同一性
 第五章 ユートピア社会主義の再来と資本の生産力

第三部 脱成長コミュニズム
 第六章 マルクスと脱成長コミュニズム MEGAと1868年以降の大転換
 第七章 脱成長コミュニズムと富の潤沢さ 

【付箋箇所】
9, 37, 47, 51, 54, 89, 137, 145, 155, 163, 182, 189, 203, 207, 216, 221, 236, 244, 294, 301, 309, 313, 333, 341, s351, 355, 360

斎藤幸平
1987 - 

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