読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

ガヤトリ・C・スピヴァク『デリダ論 『グラマトロジーについて』英訳版序文』(原著 1976, 訳:田尻芳樹 平凡社ライブラリー 2005)

1976年に英語版の翻訳が出たデリダの『グラマトロジーについて』(原著1967)の翻訳者序文で、スピヴァクのデビュー作。『グラマトロジーについて』だけでなく、当時出版されていた『弔鐘』や未刊行の論文にまで言及した本格的なデリダ論。スピヴァクの読み解き方はあくまで明快で簡潔な文章の中で核心をついているところがとても良い。デリダエクリチュールに対するこだわりを、その定義と取り上げられることの多い先行する思索者たちとの関係を押さえながら、脱構築の実践の姿勢として描き出した次のパラグラフなどに、その良さが現われていると思う。

形而上学の閉塞は、その研究の起源と目的を現前のなかに見出した。この囲いを問題視した者たち――ニーチェフロイトハイデガーを含む――は、「抹消の下に」という戦略の必要を明確化する方向に向かった。ニーチェは「認識」を、フロイトは「精神」を、ハイデガーは実際にバツ印を使って「存在」を、抹消の下に置いた。すでに論じたように、ある事物の現前を消しながらもそれが読めるように残すというこの身振りを、デリダは「エクリチュール」と名づける。それは形而上学の囲いからわれわれを解き放つと同時に、その内部でわれわれを保護する身振りである。

デリダと共にニーチェフロイトハイデガーなどの優れた解説ともなっている本書は、『グラマトロジーについて』の日本語訳へのアクセスが制限されているようになってしまった現在においても、単独の作品として十分に読む価値のある作品でる。

www.heibonsha.co.jp

【目次】
デリダの略歴
ヘーゲルデリダ ――「序文」の問題

第一節
 ハイデガーデリダ――「末梢の下に置く」をめぐって
 レヴィ=ストロースデリダ――「ブリコラージュ」をめぐって
第二節
 ニーチェデリダ
 ハイデガーデリダニーチェ
 フロイトデリダ
 再びハイデガーデリダ――脱構築の方法、時間をめぐって
 フッサールデリダ
第三節
 構造主義デリダ
 フーコーデリダ――『狂気の歴史』をめぐって
 ラカンデリダ
第四節
 デリダの用語解説――「エクリチュール」など
 脱構築批評の手続きについて
第五節
 『グラマトロジーについて』の成立と構造
 翻訳の問題
第六節

原注・訳注
訳者解説

【付箋箇所】
17, 20, 22, 29, 42, 52, 58, 68, 70, 83, 89, 94, 105, 114, 122, 124, 133, 136, 141, 154, 164, 182, 194, 229, 240

ガヤトリ・C・スピヴァク
1942 - 

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ジャック・デリダ
1930 - 2004

ja.wikipedia.org


田尻芳樹
1964 - 

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