1976年に英語版の翻訳が出たデリダの『グラマトロジーについて』(原著1967)の翻訳者序文で、スピヴァクのデビュー作。『グラマトロジーについて』だけでなく、当時出版されていた『弔鐘』や未刊行の論文にまで言及した本格的なデリダ論。スピヴァクの読み解き方はあくまで明快で簡潔な文章の中で核心をついているところがとても良い。デリダのエクリチュールに対するこだわりを、その定義と取り上げられることの多い先行する思索者たちとの関係を押さえながら、脱構築の実践の姿勢として描き出した次のパラグラフなどに、その良さが現われていると思う。
形而上学の閉塞は、その研究の起源と目的を現前のなかに見出した。この囲いを問題視した者たち――ニーチェ、フロイト、ハイデガーを含む――は、「抹消の下に」という戦略の必要を明確化する方向に向かった。ニーチェは「認識」を、フロイトは「精神」を、ハイデガーは実際にバツ印を使って「存在」を、抹消の下に置いた。すでに論じたように、ある事物の現前を消しながらもそれが読めるように残すというこの身振りを、デリダは「エクリチュール」と名づける。それは形而上学の囲いからわれわれを解き放つと同時に、その内部でわれわれを保護する身振りである。
デリダと共にニーチェ、フロイト、ハイデガーなどの優れた解説ともなっている本書は、『グラマトロジーについて』の日本語訳へのアクセスが制限されているようになってしまった現在においても、単独の作品として十分に読む価値のある作品でる。
第一節
ハイデガーとデリダ――「末梢の下に置く」をめぐって
レヴィ=ストロースとデリダ――「ブリコラージュ」をめぐって
第二節
ニーチェとデリダ
ハイデガーとデリダのニーチェ論
フロイトとデリダ
再びハイデガーとデリダ――脱構築の方法、時間をめぐって
フッサールとデリダ
第三節
構造主義とデリダ
フーコーとデリダ――『狂気の歴史』をめぐって
ラカンとデリダ
第四節
デリダの用語解説――「エクリチュール」など
脱構築批評の手続きについて
第五節
『グラマトロジーについて』の成立と構造
翻訳の問題
第六節
原注・訳注
訳者解説
【付箋箇所】
17, 20, 22, 29, 42, 52, 58, 68, 70, 83, 89, 94, 105, 114, 122, 124, 133, 136, 141, 154, 164, 182, 194, 229, 240
ガヤトリ・C・スピヴァク
1942 -
ジャック・デリダ
1930 - 2004
田尻芳樹
1964 -