読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

『五山文学集』(新日本古典文学大系48 入矢義高校注 1990)鎌倉室町期の日本の漢詩

古典注入。

漢詩が足りていないとおもい、図書館検索して岩波の新日本古典文学大系『五山文学集』を手に取る。読み下し文と脚注で鑑賞。鎌倉から室町期の臨済系の頓悟した禅僧たちの詩があつめられているのだが、詩には悟りの輝きや清浄や大安心などは、うまく埋め込まれてはいないようだ。なにぶん初読であるため、読み落としや無理解といった読み手側の問題も多くあるだろう。また、はじめの印象で、型にはまってしまっているような「懶」や「愁」ばかりうたうのはいかがなものかとかんじても、それがメインストリームということならば致し方ないのかもしれない。まずは型が大事ということもあるだろうから。

個人的には人の存在が強く感じられるリアリズム系の作品が好きなので、本集収録のなかでは別源円旨の作品に目がとまった。

 

夜座

人生天定在身前
窮達昇沈豈偶然
指上数過多日月
心中遊遍旧山川
秋風白髪三千丈
夜雨青灯五十年
靠壁尋思今古事
一声新雁度涼天

人生は天定 身前に在り、
窮達昇沈 豈に偶然ならんや。
指上に数へ過ぐ 多日月、
心中に遊び遍(あまね)し 旧山川。
秋風白髪三千丈、
夜雨青灯五十年。
壁に靠(よ)りて尋思す 今古の事、
一声の新雁 涼天を度る


七歳で仏門に入り学びつづけて五十年。円旨五十七歳くらいの時に、人生を振り返って詠んだ詩。「靠壁尋思今古事」の孤愁の姿がけっこう沁みる。

 

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目次:
蕉堅藁 絶海中津
空華集(抄) 義堂周信
済北集(抄) 虎関師錬
岷峨集(抄) 雪村友梅
寂室和尚語(抄) 寂室元光
南游・東帰集(抄) 別源円旨
東海一漚集(抄) 中巌円月
コウ余集(抄) 愚中周及
了幻集(抄) 古剣妙快


入矢義高
1910 - 1998