読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

4連休なのでジェイムズ・ジョイスの『フィネガンズ・ウェイク』を柳瀬尚紀の訳で読んでみる その2:意外にわかりやすい部分の初引用と「フィネガンズ・ウェイク九句 二の段」

原典ノンブルによる進捗:113/628 (18.0%)
フィネガンズ・ウェイク』はどんな話かというと、今読んでいる部分(第Ⅰ部)に関しては、アダムっぽい風味付けをされた中年男H.C.Eとイブっぽい風味付けをされたA.L.Pをめぐる評価話みたいなものではないかと思っている。ストーリーやシーンを追って読ませることに重きを置いていない書きかたなので、正直なところよくわからない。ジョイスの言語の圧に流されきって遭難しないようにするために、俳句っぽいものを印として落としながら、それでも言語遊戯を楽しみながら読んでいるといった感じだ。実際の作品の文章はたとえばこんな感じ。

茂みのなかで迷ってしまった気分だろうね、きみ? きみはいう、まったくもって葉(は)ちゃめちゃ語(ご)っちゃの密林じゃないかと。きみはほとんど叫ぶ、やつの森(もり)こんでいる意味を僅禽(きんきん)でも理解できるならおれは部桀徒(ベケット)なみの樗櫟(ちょれき)の切り株だと。元気を出すんだ、女々しいぞ! 四福音師(しふくいんし)がタグルム正訳(せいやく)を所有しているにせよ、どんなジプシー女学生でも蛍の光の雌鶏袋(めんどりぶくろ)からまだ生麦生米生焚付(なまむぎなまごめなまたきつけ)をついばむことができるはずだ。
河出書房新社フィネガンズ・ウェイク Ⅰ・Ⅱ』p123 原典ノンブル 113 実際は総ルビ表記)

これでも、奇跡的に引用しやすく、意味や雰囲気をとりやすいセンテンスなのだ。おもしろいけど本当にはよくわからないし、何しろ原文は英語(ジョイス語)で訳文は日本語柳瀬訳(猫訳)なので、『フィネガンズ・ウェイク』読んでいるといえるのかどうかも怪しい。だから柳瀬訳の『フィネガンズ・ウェイク』を読んでいるというほかない奇妙な読書の時間をおくっている。


フィネガンズ・ウェイク九句 二の段】

つま立ちて下痢長がまん黒臀部
予祝するわざおぎの声こえて雨
雨上がり鳴きながら飛ぶ八咫烏
異色荷でクォークと鳴く八咫烏
八咫烏(虹色気質)天上弧
雄牛相場新治療薬病垂 ※雄牛=ブル
世界樹に異端梟文字禍の眼
聖者島橋を渡るは猫ばかり
毳立ちに変わる間際よ毳玉

ジェイムズ・オーガスティン・アロイジアス・ジョイス
1882 - 1941
フィネガンズ・ウェイク』 Finnegans Wake
パリ、1922 - 1939
柳瀬尚紀
1943 - 2016