岩波文庫版「文選」の第二冊は、世の混乱のなかを生きる人間の憂い悲しみと超俗願望が多く歌われている。思うようにいかないなか音楽と詩歌が人の心を慰めている。
詠懐詩十七首 其一 阮籍
夜中不能寐
起坐弾鳴琴
薄帷鑑明月
淸風吹我衿
孤鴻號外野
朔鳥鳴北林
徘徊將何見
憂思獨傷心夜中 寐(い)ぬる能はず
起坐して鳴琴を弾ず
薄帷 明月に鑑(て)らされて
清風 我が衿を吹く
孤鴻は外野に号(さけ)び
朔鳥は北林に鳴く
徘徊して将(は)た何をか見ん
憂思して独り心を傷ましむ
楽器が弾けること、詩歌が口を突いて出るようになるまで文芸の世界に馴染んでいること。思うようにいかないなか、それくらいは思うようにいきたいけれども、それにも才能がいるのよね。公的詩文集に選出されるくらいでないと魂鎮めの効力もたかが知れているのだけれど、そのレベルの作品は書籍で拝読させていただきながら、あとは持ち合わせているものでやりくりするほか仕方がない。
【付箋箇所】
招隠詩 陸機 p123
泛湖歸出樓中翫月 謝恵連 p149
登石門最高頂 謝霊運 p183
宿東園 沈約 p242
詠懐詩十七首 阮籍 p264
秋懐 謝恵連 p313
幽憤詩 嵇康 p334
出郡傳舍哭范僕射 任昉 p403
目次:
巻二一 詠史(続),百一,遊仙
詠史(えいし)(続)
百一(ひゃくいち)
遊仙(ゆうせん)
コラム 八王の乱
巻二二 招隠,反招隠,遊覧
招隠(しょういん)
反招隠(はんしょういん)
遊覧(ゆうらん)
コラム 謝霊運
巻二三 詠懐,哀傷,贈答 一
詠懐(えいかい)
哀傷(あいしょう)
コラム 竹林の七賢