読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

エリク・アクセル・カールフェルトの詩

エリク・アクセル・カールフェルト
スウェーデン 1864 - 1931
1931年ノーベル文学賞受賞

大地に近い詩、そんな印象。

 

小宇宙(ミクロコスモス)
  ー農民暦の主題(モティーフ)による
  
私は土でできている、ひんやりと重々しく
年のわりにはのっそりと老人ふう。
心の中には黄ばんだ秋の木が一本、
すべての枝の葉ずれの音は別れの言葉さながらだ。

私は水でできている、冷たくじっとりと
乾いた粘液はこわばって凍えた涙のよう。
獲物や酒が山盛りのそのテーブルで、
冬の歓喜の、激しくもせからしい騒がしさ。

私は風でできている、明るくおだやかで
常春(とこはる)の時さながらに進んでいけば、
長い年月なおざりに、捨てておかれていたものも
風のたわむれに、生きいきと緑に甦る。

私は火でできている、衰え知らぬ夏の陽(ひ)に
乾ききって灼熱のてい。
この身がよくも焼きつきぬもの
地水火風、私の四元素ともどもに。

(田中三千夫訳)

 

土地から生まれ育ったもののたしかな感触が感じられる。


主婦の友社 ノーベル賞文学全集23より