読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

宗教

井筒俊彦『イスラーム文化 その根底にあるもの』(1981, 1991)

1981年春、国際文化教育交流財団主催の「石坂記念講演シリーズ」の三つの講演をあつめたもの。イスラームを理解しようとするならば、まず人権に対する神権という視点が必要になってくる。神が主人である世界。 講演1 イスラームという宗教は決して新しい宗…

佐藤優『世界宗教の条件とは何か』(2019)

2017年9月から12月にかけて創価大学にて行われた課外連続講座を書籍化。 キリスト教においては、苦難に耐えることと希望がセットになっています。「希望を持つ人は、苦難を克服することができる。また、現実の苦難を耐えることが将来の救いにつながる」とい…

佐藤優『君たちが知っておくべきこと ― 未来のエリートとの対話 ― 』(2016, 2019)

灘高生への特別講座の書籍化。エリート同士の交流を覗き見る。 今起きている出来事や人間のものの考え方には大抵、思考の鋳型があるんです。ほとんどはその反復現象だからね。人類がどんな思考の組み立てや論理の組み立てをしてきたのか、その歴史を知らなけ…

八木雄二『神を哲学した中世 ヨーロッパ精神の源流』(2012)

無信仰の研究者が説く中世神学案内。聖から俗まで語りの幅が広く、一般読者にも開かれた書物となっている。 中世の神学者は神をめぐる抽象的な議論にだけ没頭していたのではない。遺産相続、商業利益、所有や貸借や利子など、これまでに紹介したスコトゥスの…

中川純男 編 哲学の歴史 第三巻 神との対話 【中世】信仰と知の調和(2008)

人物ベースで中世の神学を紹介してくれる一冊。各神学者の研究者が解説を担当している。年代を追うことで西欧に近代がどのようにして芽生えてくるかを感得できるつくりになっていると思う。 哲学の歴史 3|全集・その他|中央公論新社 付箋箇所101, 109, 12…

オイゲン・ヘリゲル『日本の弓術』(1936)

ドイツ神秘主義のマイスター・エックハルトが説いた「離繋」(りけ Abgeschiedenheit)の探求のため仏教にも関心の領域を広げていたヘリゲルが、日本の大学に招かれ来日した際に仏教精神を分かち持つ弓道を習い、求道の果てに武士道の精神に到達したということ…

九鬼周造『時間論』1928年パリ近郊ポンティニーでの二講演

九鬼周造40歳での講演であり、最初の著作。粋で瀟洒な雰囲気をもつ九鬼周造だが、実際の著作を読むと意外に熱い魂にふれることができる。原文はフランス語。小浜善信による翻訳。 Ⅰ 時間の観念と東洋における時間の反復 (1928.08.11) 武士道は意志の肯定…

八木雄二『中世哲学への招待 「ヨーロッパ的思考」のはじまりを知るために』(2000)

ヨハネス・ドゥンス・スコトゥスを軸に語られる中世哲学、中世の神学の入門書。近代科学、哲学を用意することにもなるドゥンス・スコトゥスの思想を一般向けに精妙に紹介してくれている。 平凡社ライブラリー『中世思想原典集成 精選6 大学の世紀2』所収の…

ハインリヒ・ハイネ『流刑の神々・精霊物語』

主流とは異なるところから見えてくるものがある。 キリスト教進行以前の、未開ともいわれそうな時代の土地固有の文化が変形されてしまう力学を感じることができるハイネの論考2篇。 【精霊物語】 彼はむしろ自己独自の思考を信頼しようとする。彼は理性をは…

『宗教と生命』激動する世界と宗教(第三回 2018.09)

連続シンポジウム「激動する世界と宗教 私たちの現在地」の第三回講演録。パネラーは池上彰、佐藤優、松岡正剛、安藤泰至、山川宏。 第Ⅰ部の対論の「有用性の論理」についての議論が印象に残る。 遺伝子組み換えの大豆や小麦には抵抗感があるのに、山中先生…

『宗教と暴力』激動する世界と宗教(第二回 2018.04)

連続シンポジウム「激動する世界と宗教 私たちの現在地」の第二回講演録。パネラーは池上彰、佐藤優、松岡正剛、石川明人、高岡豊。 佐藤優の仏教への言及が印象に残る。 「縁起」については、因果をもとにつくり出されているいるのが現在なのだから、今を嘆…

『宗教と資本主義・国家』激動する世界と宗教(第一回 2018.03)

連続シンポジウム「激動する世界と宗教 私たちの現在地」の第一回講演録。パネラーは池上彰、佐藤優、松岡正剛、碧海寿広、若松英輔。 佐藤優のペルジャーエフへの言及が印象に残る。 ペルジャーエフは、「何かを信じていない人間は存在しない」という。無神…