読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧

玉蟲敏子 『もっと知りたい酒井抱一 生涯と作品』(2008)東京美術

琳派三人目、酒井抱一(ほういつ)。尾形光琳を見た後だと、色が淡いと感じる。その色彩感としなやかな描線から霊的な遥けさのようなものもかんじさせる。代表作「夏秋草図屏風」にも見られる銀地の表現に特色があり、静けさを湛えた非日常感を演出している…

仲町啓子 『もっと知りたい尾形光琳 生涯と作品』(2008)東京美術

琳派の生みの親、俵屋宗達に触れたので、せっかくなので琳派をもう少し追ってみる。 華やかな光琳。デザインのきいた「燕子花図屏風」もいいけど「四季草花図屏風」の生命感あふれるにぎやかさにより引き付けられる。 宗達画の学習は光琳が絵師となっていく…

『香山リカと哲学者たち 明るい哲学の練習 最後に支えてくれるものへ』(2017)

精神科医の香山リカと三人の日本人哲学者との対談三本。入不二基義、永井均、中島義道というラインナップ。聞き役の香山リカの切り込み方が浅く一本調子なこともあって、対談の成果を探すのがわりと難しい。香山リカとしてはいまの世の中の反知性主義に対し…

村重寧 『もっと知りたい俵屋宗達 生涯と作品』(2008)東京美術

琳派の生みの親、俵屋宗達。橋本治が一番好きだといっていた、俵屋宗達。はじめてちゃんと触れてみるための一冊。 早い時期に「平家納経」の補修事業に参与し、平安の原画を通して王朝美の粋に触れ、また自らも欠損した六図の補作を手掛けたことは、のちの宗…

福岡伸一『芸術と科学のあいだ』(2015)

日本経済新聞に連載された芸術よりのコラムの書籍化。フェルメール愛が突出している。 芸術と科学のあいだに共通して存在するもの、それは今も全く変わっていない。この世界の繊細さとその均衡の妙に驚くこと、そしてそこにうつくしさを感じるセンスである。…

中野京子『「怖い絵」で人間を読む』(2010)

各王室の内側が絵画作品を通して語られる章が読みごたえがあった。 運命の章:スペイン・ハプスブルグ家呪縛の章:オーストリア・ハプスブルグ家憎悪の章:ブルボン朝憤怒の章:ロマノフ朝 絵から歴史を読み解いていくというのは贅沢な感じだ。学生のころに…

高橋昌一郎『ノイマン・ゲーデル・チューリング』(2014)

三人の代表的講演、論文の訳出をメインに据え、「解題」と「生涯と思想」を添えている。ゲーデルについては専門家にむけた講演であるようで、解説があってもなかなか歯が立たないレベルの内容だったが、それでもやはり本人の原稿に直接触れるためのさまざま…

佐藤優『世界宗教の条件とは何か』(2019)

2017年9月から12月にかけて創価大学にて行われた課外連続講座を書籍化。 キリスト教においては、苦難に耐えることと希望がセットになっています。「希望を持つ人は、苦難を克服することができる。また、現実の苦難を耐えることが将来の救いにつながる」とい…

佐藤優『君たちが知っておくべきこと ― 未来のエリートとの対話 ― 』(2016, 2019)

灘高生への特別講座の書籍化。エリート同士の交流を覗き見る。 今起きている出来事や人間のものの考え方には大抵、思考の鋳型があるんです。ほとんどはその反復現象だからね。人類がどんな思考の組み立てや論理の組み立てをしてきたのか、その歴史を知らなけ…

飲茶『哲学的な何か、あと数学とか』(2009)

フェルマーの最終定理の証明をめぐる数学歴史読み物。1600年頃に始まり1995年に最終的に証明されるまでの数学に取りつかれた人間たちのドラマ。感動的な本だが、数学自体の解説本ではないので注意。 その手の人々(引用者注:未解決問題に無謀にも挑む人々)…

足立恒雄『「無限」の考察 ∞-∞=?』(2009)

数学読み物。対象は高校生くらいから。 「無限」にターゲットを絞って、丹念に解説してくれている。 無限という概念は人類が考え出したものです。有限の対象で成り立つような事柄の中には無限の対象としても成り立つとして差しつかえない場合もありますが、…