2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧
「ビートの父」として知られる1905年生まれのレクスロスから上海から移住して英語で詩を書く1957年生まれのワン・ピンまで、20世紀のアメリカの特徴的な詩人を集めて、アメリカ現代詩の動向を概観できるようにしたアンソロジー『アメリカ現代詩1…
旧約聖書の挿画が155点、新約聖書の挿画が78点。いずれも精緻な木口木版画作品で、聖書の世界に見るものを引き込まずにはおかない傑作ぞろい。「古典文学の世界を、自らが描いた圧倒的な量の画像で視覚的に物語る」というドレが掲げた一大目標のうちで…
本当の修羅は修羅でない者にむかってことばを投げつけずにはいられないものなのだろう。 だから、多作が可能であり、際限のない推敲が可能となるのだろう。 50歳を過ぎてようやく納得できたのは、私自身は修羅ではないということ。 その差を確認するための…
2020年のノーベル文学賞受賞作家の第六詩集。本作にてピューリッツァー賞詩部門を受賞、詩人の著作の中では最も読者層に受け入られた詩集でもある。 花咲き実を結ぶ植物と、その植物との出会いの場となる小さな庭園を主要なモチーフに、自身の揺らぎ続け…
明晰と錯乱の混淆した類いまれな作品。アルトーが生前に構想していた最後の作品は、長期間におよぶ精神病院収用の最後の数年間に書かれた書簡と詩的断章からなるもので、妄想と呪詛が現実世界に対して牙をむいている。全集編者による推奨の短文に「アルトー…
アウグスティヌス『神の国』第三分冊、第11巻から第14巻を収める。 古代の終焉と中世の端緒の時代に多大なる影響力を持ったアウグスティヌスの世界観は、21世紀の現代の私たちの感覚とは異なる。異なっているがゆえに、参考になることもおおいにある。…
19世紀末から20世紀にかけて活動したデンマーク人画家、ヴィルヘルム・ハマスホイ。本書には、同時代の交流のあった画家たちの作品がわりと沢山紹介されていて、時代の風潮としてほかの画家たちと似かよっているところと、誰にも似ないハマスホイならではの…
2020年度ノーベル文学賞詩人の63歳での第10詩集。『野生のアイリス』に次ぐ二冊目の日本語訳詩集。 一時間たらずで読み通せてしまうので、気になったときに再読するのに適した分量、そして内容。 母娘の世代間に関する齟齬の物語。 押し付けられたの…
アントナン・アルトーの翻訳者ということで身構えていたが、読んでみるといたって穏当で建設的。幻想的フィクションを織り交ぜているが、それは世界をよりよく見取り、新たな相を見せるようにするための詩的な戦略で、きわめて実践的なものであることが感じ…
美術を愛する作家二人によるアート談義。両人ともにエピソードが常人離れしているので、短いパッセージのなかに情報と情動が凝縮されていて、読み手は凝視せざるをえない。さらに、編集部の優れた仕事振りが伺える注記と図版による補完体制が質量ともに充実…
実現するにはいたらなかったがリルケがロダンに次いで作家論を書こうとしていたのが本書で紹介されているデンマーク・コペンハーゲンが生んだ特異な象徴主義の画家ヴィルヘルム・ハマスホイ。「北欧のフェルメール」とも言われるハマスホイであるが、フェル…
高見順の異母兄にあたる福井県出身の詩人阪本越郎が、福井に縁の深い三好達治の作品ひとつひとつに的確な鑑賞文をつけて案内してくれる良書。第一詩集『測量船』から最後の詩集『百たびののち』まで、代表作とみられるものがこの一冊で優れた読み手の読解付…
俳人石原八束はすでに飯田蛇笏主宰の「雲母」の編集に携わっていた1949年30歳の時に詩人三好達治に師事することになり、1960年から詩人の死の年まで三好達治を囲む「一、二句文章会」を自宅にて毎月開催していた。 本書は昭和50年代に各所に発表…
翁なのか、幼児であるのか、はたまた、生者であるのか、死者であるのか、いずれでもなくいずれでもあるあわいを生きていることはそれぞれの詩が強烈に主張しているけれども、70歳を迎えた身体からくりだされることばは、時間と空間の閾に通路を拓きながら…
「初めて現代詩を読もうとする年少の読者のために」書かれた批評家的資質の確かな詩人による現代詩入門書というのが本書の位置づけではあるが、刊行年度が1952年ということもあって、内容的には文語調の近代詩から口語自由詩へ発展し定着していく過程を…
小説としては前期三部作『モロイ』(1951)『マロウンは死ぬ』(1951)『名づけえぬもの』(1961)に次ぐストーリー解体後の後期モノローグ作品の端緒となる最後の長篇といえる作品。もっとも読まれ、もっとも知られてもいるだろう戯曲『ゴドーを待ちながら』(1952…
2023年は『青猫』刊行百周年。ほかには高橋新吉「ダダイスト新吉の詩」百周年であったり、伊藤野枝、大杉栄没後100年だったりするが、中学生での初読以来『青猫』のイメージは強烈で、なじみ深いものともなっている。今でも機会があれば読み返したり…