読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

空海

松長有慶ほか『即身 密教パラダイム 高野山大学百周年記念シンポジウムより』(河出書房新社 1988)

空海が即身成仏思想を説いた『即身成仏義』を中心に、西欧の学知の世界で新機軸を打ち出しながら研究を進める三人の柔軟な知識人をむかえて、空海思想の現代的意味をとらえようとしたシンポジウムの記録と、シンポジウムに関連した論考の集成からなる一冊。 …

松長有慶『訳注 声字実相義』(春秋社 2020)

『訳注 即身成仏義』についで刊行された空海訳注シリーズの第4弾。大日如来が現実化したものとして現われ出ている現実世界をかたちづくるものすべては塵すべては文字いう空海の密教思想を説いた『声字実相義』の解釈本で、平易な表現にもかかわらず、古くか…

松長有慶『訳注 即身成仏義』(春秋社 2019)

仏教一般に対して空海の思想の特異な点は、すべてが大日如来の発現であるとしているところで、物質も精神も本質的には違いがないという教えが説かれている。この点に関して本書では特に本論の第六章「生み出すものと生み出されるものの一体性」に詳しい解説…

竹村牧男『華厳とは何か』(春秋社 2004, 新装版 2017)

Eテレ「こころの時代」2002年度のテキストをもとにした華厳入門書。比較的手に入りやすい華厳思想の入門書のなかでは、もっとも詳しい思想解説と経典読解ではないかと感じた。特に第二部は華厳思想入門から実際の経典への導きとしての道を示していて貴…

ひろさちや『空海を生きる』(佼成出版社 2021)

『空海入門』(祥伝社 1984, 中公文庫 1998)から37年、ひろさちや晩年の空海語り。空海の著作自体に言及することが多くなっているところ以外で語られる基本的な内容はほとんど変わりはない。空海像がより柔軟になり、超人色がすこし世俗的な光の下に見直され…

ひろさちや『空海入門』(祥伝社 1984, 中公文庫 1998)

学問的入門書というよりも、司馬遼太郎の『空海の風景』と同じく、資料を調べながら著者の想像の肉付けを加えていった小説風人物伝といった味わいの一冊。空海は平安時代に唐から密教を日本に持ち帰ったのではなく、密教系経典を持ち帰ったうえで密教そのも…

竹村牧男『唯識・華厳・空海・西田 東洋哲学の精華を読み解く』(青土社 2021)

現在のグローバリゼーションの時代において、異質な他者との共存を考えるための知恵として、古代から営まれてきた東洋哲学の清華を見直していこうという意図をもって書かれた著作。大乗仏教の根幹をなす唯識思想から、華厳の事事無礙法界を経て、空海の曼荼…

加藤精一 編『空海「般若心経秘鍵」』(原著 834, ビギナーズ 日本の思想 角川ソフィア文庫 2011)

空海の最晩年、入定前年61歳の時の著作。主著『秘密曼荼羅十住心論』や『秘蔵宝鑰』で展開された顕教から密教へと至る仏の教えの階梯を、「般若心経」270字のなかに読み解く、空海の天才的思考が凝集された見事な果実。加藤精一による現代語訳と解説に…

訳: 加藤精一『空海「弁顕密二教論」』(ビギナーズ 日本の思想 角川ソフィア文庫 2014)

顕教と密教の違いを説く空海の書。仏陀を法身、応身、化身の三身に分けたときに、法身の大日如来が直接説かれた教えを密教、法身大日如来から派生的に現じた応身化身の諸仏が、教える相手によってさまざまに説き分けた教えを顕教とした、空海独自の教論。大…

田村圓澄『日本を創った人びと 3 空海 真言密教の求道と実践』(平凡社 1978 編集:日本文化の会)

軽めの内容かと思ったら、本文も掲載図版も文句のつけようがない優れた一般向け専門書的図鑑だった。平凡社刊行だから、別冊太陽もしくはコロナ・ブックスのシリーズを想像していただくと、文章と図版の質と量の水準の高さの程度が知れるかと思う。全82ペ…

安藤礼二『列島祝祭論』(作品社 2019)

折口信夫の古代学に導かれ日本の祝祭と芸能の展開を追っていく批評作品。「神憑」を聖なる技術としてきた「異類異形」かつ「異能」の者たちは、里の世俗の秩序とは異なる山の聖なる秩序の下で生き、アナーキーかつ神聖なる怪物あるいは霊力を解放する祝祭を…

安藤礼二『霊獣 「死者の書」完結篇』(新潮社 2009) 作者安藤礼二は熱狂と冷徹を兼ね備えた異能の憑依者であると思う

空海を主人公に迎えた折口信夫未完の小説『死者の書 続編』を批評的にたどり直した一冊。 未完の物語を引受けた小説を期待して読むと場違いなことに気づく。※水村美苗の漱石『明暗』に対するアプローチとは異なる続編作家としての引き受け方を提示している。…

竹村牧男『空海の哲学』(2020, 講談社現代新書)

唯識思想や華厳思想が専門の著者が宗門を超えて空海の「即身成仏」をマテリアリスティックに読み解くしびれる一冊。 この環境世界も仏国土そのものであるのが実情なのである。じつに「草木国土、悉皆成仏」である。この句の意味は、「草木国土も悉皆、未来に…

空海『即身成仏義』(加藤精一編 角川ソフィア文庫 ビギナーズ日本の思想 2013)

空海の思想の中心はやはり即身成仏。詳細な解説書を読む前に、原文読み下し文と簡易解説に触れておくほうが良いと思うので、角川ソフィア文庫のビギナーズ日本の思想シリーズを手にされることをすすめる。 【即身成仏の頌】六大無礙にして常に瑜伽(ゆが)な…

アントニオ・ネグリ『スピノザとわたしたち』(原書2010, 訳書2011)

『野生のアノマリー スピノザにおける力能と権力』(1981)から30年たったところで出版されたネグリのスピノザ論集。会議での発表用テキスト四本に序章を追加した著作。口頭発表用の原稿とあって、味わいが濃いわりに、理解もしやすい。聴衆や読者の好奇心を…

高村薫『空海』(2015)

高村薫が空海を取材する必然性があまりよく分からない一冊。密教の身体感覚というところで空海に結び付くのだろうけれど、空海自身の思想が立ち上がってくるわけではなく、行者の一傾向がクローズアップされているような印象があった。 寶壽院は典型的な祈祷…

空海 性霊集 目次(表形式)

空海 性霊集日本古典文学大系71 三教指帰 性霊集渡辺照宏・宮坂宥勝 校注 性霊集全10巻の内容についての資料 表形式で整形カラムの定義第1カラム:巻数第2カラム:作品番号第3カラム:詩の有無第4カラム:題 遍照發揮性靈集 巻第一 1 1 〇 山で遊むで仙…

空海 性霊集 CSV資料

空海 性霊集日本古典文学大系71 三教指帰 性霊集渡辺照宏・宮坂宥勝 校注 性霊集全10巻の内容についての資料 CSV形式で整形カラムの定義第1カラム:巻名第2カラム:作品番号第3カラム:詩の有無第4カラム:題 1,1,〇,山で遊むで仙を慕ふ詩 併序1,2,〇,秋…

空海 性霊集

空海日本古典文学大系71 三教指帰 性霊集渡辺照宏・宮坂宥勝 校注 図書館物件 性霊集十巻読み下し文で通読。総ルビなので読めた。感嘆。ため息が出た。 巻第八72 招提寺の達嚫の文一首 より心暗きときは即ち遇う所悉く禍なり、眼明らかなれば道に触れて皆宝…

NHK取材班 「『空海の風景』を旅する」

NHK取材班『空海の風景』を旅する2002, 2005 『空海の風景』を旅する|文庫|中央公論新社 留学資金を自費で賄った空海、山の民に通じた空海という二つの視点が印象的。また、各所にちりばめられた空海にまつわる写真が新鮮。空海密教のパワーを映像で伝えて…

梅原猛 『最澄と空海 日本人の心のふるさと』

梅原猛最澄と空海 日本人の心のふるさと2002, 2005 www.shogakukan.co.jp 良書。日本の土着信仰、山岳信仰と融合した密教という視点が濃厚。空海の部から最澄の部へと読み進めたほうが上記視点はよく感じとれる。また、厳格な戒律と修行による即身成仏の教え…

渡辺照宏+宮坂宥勝 『沙門空海』

渡辺照宏+宮坂宥勝沙門空海1967, 1993 筑摩書房 沙門空海 / 渡辺 照宏 著, 宮坂 宥勝 著 基本図書。生涯全般を追える作品。 気になった点:・空海につづく人物が宗門から出こないことについて空海以後において、彼の真言密教はほとんどいかなる意味において…

上山春平 『空海』

上山春平空海1992 (品切れ・再販未定)再販希望図書館物件 朝日新聞出版 最新刊行物:書籍:空海 良書。本書は研究書的な位置づけにある著作ではあるが、司馬遼太郎の『空海の風景』に匹敵する小説的著述としてのパワーがある。衝撃度的には本書のほうが上…

宮坂宥勝 『空海 生涯と思想』

宮坂宥勝空海 生涯と思想1984, 2003 筑摩書房 空海 生涯と思想 / 宮坂 宥勝 著 著者の空海関連のエッセイ18篇を集めたもの。空海本一冊目ではなく、興味を持ってからのつまみ食い本、復習本としての利用が吉。 おすすめは日本仏教史上における空海 最澄と…

梅原猛 『空海の思想について』

梅原猛空海の思想について1976, 1980 bookclub.kodansha.co.jp 肯定する空海の強調。100ページで一挙に核心に連れて行ってくれます。『生命の海 「空海」 仏教の思想〈9〉』所収の「死の哲学から生の哲学へ」よりも、空海の個別の著作によりそいながら彼…

宮坂宥勝+梅原猛 『生命の海 「空海」 仏教の思想〈9〉』

宮坂宥勝+梅原猛生命の海 「空海」 仏教の思想〈9〉1968, 1996 www.kadokawa.co.jp 密教の再発見 対談:宮坂宥勝+梅原猛 隠れた真相があるというのが、やはり秘密じゃないかと思うのです。近代的な意味の神秘主義ではないんですけれども、そこに、何かとらえ…