読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

漢詩

吉川幸次郎・三好達治『新唐詩選』(1952,1965)

学者と詩人それぞれからの唐詩紹介。新書だがとても密度が濃い。 吉川幸次郎:杜甫の絶句(江は碧にして鳥は逾よ白く)をめぐって この短い詩の底には、中国の詩に常に有力な、二つの感情が流れている。ひとつは、さっきのべた推移の感覚である。推移する万…

高田眞治訳注 集英社漢詩体系1・2『詩経(上・下)』

詩経の詩篇をとりあえず通読。現代人の等身大スケールで理解できる作品がやはり読み取りやすい。 兔爰(とゑん) 兔(と)有り 爰爰(えんえん)たり 雉羅(ちら)に離(かか)る我が生の初め 尚(こひねがは)くば為(な)す無(な)けんど我が生の後 此(…

白川静『詩経 中国の古代歌謡』(1970)

『万葉集』と『詩経』を共に読むことを人生の中心に据えた白川静の『詩経』側の著作。 『万葉』が早く創作詩として個人の世界、心情の内面に沈潜していったのは、わが国の文学において古くから社会性の欠如がその特質をなす傾向のあったことを示している。詩…

揖斐高訳注『頼山陽詩選』(2012)岩波文庫

江戸後期の代表的漢詩人、頼山陽の120篇の詩。歴史を題材にとった作品が多いが、それよりも生活をうたった作品の方に興味を持った。幕末を用意した時代の貧乏儒学者の生活の雰囲気がなんとなく伝わってくる。 読書八首(其三) 今朝(こんちょう)風日(ふう…

瀬尾文子『春怨秋思 コリア漢詩鑑賞』(2003)

高句麗・新羅・高麗・李朝1200年のなかから、代表的な詩人100人の詩篇146首を紹介している。作者の紹介からは政争によって死刑や流罪、投獄、辞職などに追い込まれた人物が多いような印象を受けたが、それに比して紹介されている詩はおとなしいものが多いよ…

井波律子『中国名詩集』(2010)

前漢の高祖劉邦から20世紀の毛沢東までの漢詩百三十七首。中国の詩は嘆きも喜びもスケールが大きく強さがある。 竹石 鄭板橋(ていはんきょう:清) 青山(せいざん)を咬定(こうてい)して放鬆(ほうしょう)せず根を立つるは 原(も)と破巌(はがん)の…

大岡信『紀貫之』(1971, 2018)

「土佐日記」が好きなので紀貫之を悪く思ったことはない。歌も悪いとは感じない。 影見れば波の底成るひさかたの空漕ぎわたるわれぞわびしき 正岡子規によって戦略的に「下手な歌よみ」と宣言されてしまった紀貫之ではあるが、大岡信は本書によって紀貫之の…

山崎昇『人と思想149 良寛』(1997 清水書院)

清水書院の「人と思想」シリーズで詩人が対象となる場合、伝記に実作品がふんだんに取り入れられて、優れたアンソロジーを読んだ気分にさせてくれる。本書の場合も漢詩、俳句、和歌の区別なく取り入れられていて、さらには書の図版も多く、良寛の全体像が見…

滝川幸司『菅原道真 学者政治家の栄光と没落』(2019)

菅原道真の官吏としての生涯を漢詩を絡めて解説した書籍。歴史的情報は十分だが、詩人としての魅力がいまひとつ伝わってこないのが惜しい。 筆者は日本文学研究者であり、道真を漢詩人として考えることが多い。しかし、道真が官僚であった以上、道真伝は、そ…

足をのばす良寛

自制を少しゆるめるとき、足をのばして過ごす良寛が姿をあらわす。【歌】きさらぎの末つ方雪のふりければ 風まぜに 雪は降り來ぬ雪まぜに 風は吹き來ぬ埋み火に 足さしのべてつれ/\と 草のいほりにとぢこもり うち數ふればきさらぎも 夢の如くに盡きにけら…

東郷豊治編著『良寛詩集』創元社

東郷豊治編著 良寛詩集創元社1960※1957年の良寛全集版を修正 本文、読み下し文、訳の三部で構成。全詩を十章に分類して配列(ただし法華讃は取り上げられていないようである)。 現代語訳あり分類ありで、とても親しみやすい。 内容: 章 章題 作品番号 一 …

高橋睦郎『漢詩百首』

高橋睦郎漢詩百首 漢詩百首|新書|中央公論新社 2007 孔子、荘子から魯迅、毛沢東まで中国旧詩人六十人、聖徳太子、大津皇子から河上肇、鷲巣繁男まで日本の漢詩人四十人で漢詩の歴史を通覧させてくれる。構成としては高橋睦郎による読み下し文、訳、解説の…

長田弘 『奇跡 ーミラクルー』

長田弘奇跡 ミラクル www.msz.co.jp2013 全詩集に入っていないかと思っていたら入っていた。記憶はあいまい。忘れるから何度でも読む。読んで、確認して、記憶をたどって過去にも出会う。そうして記憶を重ねていく。 今回のきっかけは、良寛。 今日は単著、…

水上勉 『良寛』

水上勉良寛1984 徳川の支配の仕組みに組み込まれた宗門を批判的に見る清らかさはあったが、僧としての資質には傷があったという視点から良寛が語られている。曹洞宗の僧良寛というよりも、家を捨て、宗門を捨て、文芸に生きようとした人間山本栄蔵の一生を、…

久須本文雄 寒山拾得

久須本文雄寒山拾得 bookclub.kodansha.co.jp 原文、読み下し文、現代語訳、訳注のほか白隠の注釈も多く紹介されています。寒山詩は思想的に道教、儒教、仏教が混じっているようです。 100. 生死の譬を識らんと欲せば 且らく氷水を将って比えん水結べば即ち…

『良寛道人遺稿』と『良寛詩集』 対応資料 (CSV形式)

良寛道人遺稿番号,良寛詩集頁,原文一行目1,295,開口謗法華2,296,如是両字高著眼3,296,白毫相光何所似4,297,文殊高々峰頂立5,297,度生已了未生前6,298,性相体力作因縁7,298,十方佛土在指注8,299,諸法本来寂滅相9,300,昔時三車名空有10,300,昔時三車名空伝11,3…

『良寛道人遺稿』と『良寛詩集』 対応資料 (表形式)

『良寛道人遺稿』と『良寛詩集』 対応資料 良寛道人遺稿 柳田聖山 訳 良寛道人遺稿|全集・その他|中央公論新社 読み下し文と訳で構成。原文はなし 訳注 良寛詩集大島花束・原田勘平 訳注 訳註 良寛詩集 - 岩波書店 原文と読み下しと訳注から構成。 現代語…

訳注 良寛詩集

良寛訳注 良寛詩集大島花束・原田勘平 訳注 www.iwanami.co.jp 大島花束編著の良寛全集(岩波書店)の漢詩全部(四百余)を収録。原文と読み下しと訳注から構成されている。 無一物の生涯とはいうが、信仰する法華経があって、詩書があって、自作の和歌は千…

良寛道人遺稿

良寛良寛道人遺稿柳田聖山 訳 良寛道人遺稿|全集・その他|中央公論新社 曹洞宗の禅僧、道元の系列、良寛の漢詩。読み下し文と訳で構成。原文はなし。柳田聖山の訳が読みやすく、解説も熱く、良寛初読に向いていると思う。 柳田聖山解説: 『毒語心教』にし…

楚辞 屈原

楚辞(屈原) 集英社 漢詩体系3 楚辞1967 訳・解説:藤野岩友 読書では漁夫の漁夫側の肩を持つ性向があるため、屈原にはなかなか近づけないでいる。 屈原紀元前343頃 - 紀元前278年頃 藤野岩友1898 - 1984

空海 性霊集 目次(表形式)

空海 性霊集日本古典文学大系71 三教指帰 性霊集渡辺照宏・宮坂宥勝 校注 性霊集全10巻の内容についての資料 表形式で整形カラムの定義第1カラム:巻数第2カラム:作品番号第3カラム:詩の有無第4カラム:題 遍照發揮性靈集 巻第一 1 1 〇 山で遊むで仙…

空海 性霊集 CSV資料

空海 性霊集日本古典文学大系71 三教指帰 性霊集渡辺照宏・宮坂宥勝 校注 性霊集全10巻の内容についての資料 CSV形式で整形カラムの定義第1カラム:巻名第2カラム:作品番号第3カラム:詩の有無第4カラム:題 1,1,〇,山で遊むで仙を慕ふ詩 併序1,2,〇,秋…

空海 性霊集

空海日本古典文学大系71 三教指帰 性霊集渡辺照宏・宮坂宥勝 校注 図書館物件 性霊集十巻読み下し文で通読。総ルビなので読めた。感嘆。ため息が出た。 巻第八72 招提寺の達嚫の文一首 より心暗きときは即ち遇う所悉く禍なり、眼明らかなれば道に触れて皆宝…

夏目漱石の漢詩を読む

飯田利行著新訳 漱石詩集1994 出版社:柏書房 新訳 漱石詩集 柏書房株式会社 ノンフィクション・歴史・古文書の出版社 図書館物件(品切れ・重版未定)出版社によれば「唯一の漱石詩全訳本」とのこと。訳文は超訳の部類に入るかもしれません。 例えば大正五…

松浦友久 『漢詩 美の在りか』

松浦友久漢詩 美の在りか2002 www.iwanami.co.jp 良書。漢詩が身近に感じられる視点を提供してくださっています。特に5章は秀逸。 「訓読漢詩」というものが、事実上、日本語の「文語自由詩」にほかならないこと、それによって、「和歌」や「俳句」のような…

菅原道真 菅家文草 菅家後集 メモ(表形式)

菅原道真 菅家文草 菅家後集 メモ(表形式) 菅家文草 巻一 2 臘月独興。 p105 学業の勧め 11 翫梅華、各分一字。 p116 春一番の風 39 八月十五夕、待月。席上各分一字。 p134 宴を準備し客を呼んだのに月が出ないで残念 76 海上月夜。 p163 敦賀の津に到着…

菅原道真 菅家文草 菅家後集

菅原道真 日本古典文学大系4 菅家文草 菅家後集川口久雄 校注 図書館物件 新規入手は岩波オンデマンドブックスで可能 菅家文草 菅家後集 - 岩波書店 私はしばらく図書館と古書店をうろつこうと思います。それで、返却期限が迫っているためとりあえず再読用…

大岡信の菅原道真

大岡信 詩人・菅原道真 うつしの美学1989 (岩波現代文庫 2008) www.iwanami.co.jp 菅原道真の漢詩の紹介というよりは、副題の日本文学における「うつしの美学」の考証により価値があるような本です。和歌と漢詩文との比較のなかで和歌が優位にある日本の文…

加藤周一の菅原道真

『日本文学史序説 (上)』(ちくま学芸文庫)1975 筑摩書房 日本文学史序説 (上) / 加藤 周一 著 読書メモ:p135 貫之・道真に代表される九世紀末の知識人文学の成立は、その後の日本文学史を視野に入れるとき、まさに画期的であったといわなければならな…

李賀

李賀の全作品を初めて通読。 図書館物件。 集英社 漢詩体系13 李賀1967 訳・解説:齋藤晌 通読してから翻訳解説者の齋藤晌がスピノチストでエチカの翻訳もあることを知って、少し思いを巡らしました。李賀のコナトゥスってどのようなものだったのでしょう…