2022-02-01から1ヶ月間の記事一覧
2009年に受理された著者の博士論文『カヴァイエスにおける「操作」と「概念」――数学的経験における構造の弁証論的生成について』をベースに、カヴァイエス『構造と生成Ⅱ 論理学と学知の理論について』での解説と重複する部分を削除の上、加筆改訂した論考。…
野口米次郎の第一詩集'Seen and Unseen: or Monologues of a Homeless Snail'は移民渡航後三年目にしてアメリカで現地出版された英語の詩集。日本人の神秘的精神性に興味を持たれたのと、ネイティブが使用しないような言葉や変わった造語を用いたことが新鮮…
二重国籍、二重言語であるがゆえに日本と西洋との橋渡し的存在となり得た日本近代詩黎明期の詩人、二重化の上にそれぞれ残った野口米次郎とYone Noguchi。 同時代的には、インドのタゴールが英語とベンガル語の二重言語を使用し、1913年には『ギタンジャリ(…
パルメニデスを主人公にした対話篇。 年少のソクラテスやアリストテレスに対する思考の準備運動の実践教育らしいが、字面を追うだけで精一杯。文書で読んでいるからまだいいようなものの、話し言葉を耳で聞いて理解し対応するとなると至難の業。 一と多、有…
日本の和歌の現代的鑑賞は結構難しい。歌の姿が元のままであることは少ないし、元のままが現代的鑑賞にいちばん適しているとも言いづらいからだ。ひらがなで表示されれているか漢字で表示されているかで、同じ音であっても印象が異なるのが日本語の面倒なと…
金沢市の書店「石引パブリック」で2019年に開催された全11回の連続講座「仲正昌樹と考える:哲学JAM」を書籍したもの。三分冊で赤、青、白と分けられている。 仲正昌樹+作品社+連合設計社市谷建築事務所から成る入門講義シリーズとはちょっとテイストが変…
さびしさや思ひよわると月見れば心の空ぞ秋深くなる真冬に感じる秋の寂しい寒さ。いまは月もいるかどうか見えない部屋の一室。言葉の淵にただ沈む。
読み終えて、ああ終わっちゃったとさみしさが湧いてきた。読んでいる最中もなんだかさみしいなあと思いながらの読書だった。たぶん、特殊個人的なケースだと思う。 大学で哲学を教える千葉雅也の2017年39歳時の海外学外研究(サバティカル)での交流記、滞在…
仲正昌樹の博士論文『<隠れたる神>の痕跡――ドイツ近代の成立とヘルダリン』(1996)に、2009年のハイデガー・フォーラムでの報告論考「哲学にとっての母語の問題――ハイデガーのヘルダリン解釈をめぐる政治哲学的考察」を付録としてつけて刊行されたもの。 市民…
ジャン・カヴァイエス(1903-1944)の名前を知ったのはつい最近のことで、図書館の検索システムで書名にスピノザと入れて見ていたところ、近藤和敬著『〈内在の哲学〉へ カヴァイエス・ドゥルーズ・スピノザ』(青土社 2019年)という検索結果に目が止まった…
美術家森村泰昌の初の著作にしておもしろさを徹底した大傑作。 実作者が見て語る美術は、素人愛好者が観て満足している美術とはひと味もふた味もちがったところがあり、わらってしまいながらも、目も心も洗われている。本気がすぎてふざけているようにも見え…
西田幾多郎『善の研究』(1911)と和辻哲郎『人間の学としての倫理学』(1934)の読解講義。とりあえず両作ともに目を通したことがあるところで本書を読んだ印象では、仲正昌樹の入門講義シリーズは、対象となった哲学者やその著作がおおよそどのようなこと…
批評家安藤礼二の名前をはじめて意識したのは角川ソフィア文庫の鈴木大拙『華厳の研究』(2020年)の解説。ずいぶんしっかりした紹介をしてくれる人だなと気になって最近複数の作品にあたっていたが、折口信夫研究からの必然的な展開として新仏教家藤無染を…
20世紀への転換期にあたる時期、野口米次郎(ヨネ・ノグチ)の詩人・文化人としての前半生と、極東日本の神秘性を期待して無名のノグチを受容していった英米の文化芸術層の様子をコンパクトにまとめあげた興味深い一冊。 世紀末思想、アメリカのフロンティ…
生きているあいだに確実に超えられない業績を残している人に出会ってしまうのは結構つらい経験ではあるのだが、本を読むということは、そんなつらい経験をあえてもとめているようなところが大きい。 なぜ強いられてもいないのに読んでしまうかというと、これ…
折口信夫の古代学に導かれ日本の祝祭と芸能の展開を追っていく批評作品。「神憑」を聖なる技術としてきた「異類異形」かつ「異能」の者たちは、里の世俗の秩序とは異なる山の聖なる秩序の下で生き、アナーキーかつ神聖なる怪物あるいは霊力を解放する祝祭を…
チョムスキーの生成文法革命の端緒となった著作『統辞構造論』の翻訳。チョムスキーが当初信奉していた構造主義言語学から転換して言語の変換理論と各言語の変換構造に関する研究に舵を切るようになってはじめて出版された著作で、マサチューセッツ工科大学…
『統辞理論の諸相 方法論序説』は原著全四章のうちの研究の枠組みについて述べた第一章のみを訳出したもので、二章以降の本編はる数理論理学等を使った統辞論で専門家以外には容易には近づけないものであるらしい。第一章は記号も数式も出さずに方法論を述べ…
ドゥルーズの絵画論。哲学の自由と絵画の自由のコラボレーション。主として取り上げられるのはフランシス・ベーコンだが、ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌ、クレー、アルトー、ポロック、抽象表現主義などにも言及しているところが読み通してみるとあらためて…
空海を主人公に迎えた折口信夫未完の小説『死者の書 続編』を批評的にたどり直した一冊。 未完の物語を引受けた小説を期待して読むと場違いなことに気づく。※水村美苗の漱石『明暗』に対するアプローチとは異なる続編作家としての引き受け方を提示している。…
「人間本性の変形や物の存在の価値転換」という革命を準備し実践するのが哲学の使命だとする江川隆男の2010年代の論考を中心に集めた一冊。大冊『アンチ・モラリア <器官なき身体>の哲学』(河出書房新社 2014)と『スピノザ『エチカ』講義 批判と創造…
アンチ・モラリアは21世紀のエチカを目指して書かれた江川隆男の主著。反道徳としての倫理を世界に打ち込む。「神の死」、「人間の死」につづく「世界の死」を実現するために。スピノザ、ニーチェ、ドゥルーズ=ガタリの著作を深く読み込みながら思考して…
2020年に七月堂の叢書版『ピエール・ルヴェルディ詩集』が刊行されたのに続いて、新訳新編集で刊行されたピエール・ルヴェルディのアンソロジー。2021年8月にさらに七月堂から佐々木洋の訳で詩集『死者たちの歌』が刊行されている。知らないところ…
ベルクソン壮年期の多年にわたる講演論文集。精神と脳との関係を追求した思索を追うことができる刺激的な一冊。 ロンドンの心霊研究協会での講演「《生者の幻》と《心霊研究》」(1913)なども含んでいるため、妖しげな部分もある論考かと、色眼鏡をもって読…