人文書
ゲオルク・ジンメルもドゥルーズ=ガタリもちゃんと読んでいるわけではないので一読者の勝手な印象でしかないのだが、ジンメルはおだやかなドゥルーズ=ガタリ(且つガタリ弱め)のような感じがしていて、咀嚼するのに大変なところはあるものの、いろいろお…
三日連続の休みなので、社会学をまとめて読もうかと・・・ 二クラス・ルーマンも候補にあったけれど、資料が集まらず、ゲオルク・ジンメルに決定。 1.『社会的分化論 社会学的・心理学的研究』(1890) 石川晃弘, 鈴木春男 訳 (中央公論社 世界の名著 47 196…
中世神学の普遍論争についての導入書。実在論者の肩を持とうとする著者が「形而上学的普遍」の実在性を何とか示したいといいながら、あまりうまくいっているようには思えないところが、かえって誠実で好感の持てる一冊。アウグスティヌスやアリストテレスか…
中沢新一、七〇歳のレンマ学言挙げ。あと十年ぐらいは裾野を拡げる活動と頂を磨き上げる活動に注力していただきたい。難しそうな道なので陰ながら応援!!! 横道に逸れたら、それも中沢新一。私とは明瞭に違った人生を生きている稀有な人物。変わった人なの…
ブルーノ・ムナーリはイタリアのプロダクト・デザイナー、グラフィック・デザイナー。代表作は「役に立たない機械」。レオ・レオニとウンベルト・エーコが特に親しいお友達。発想を柔らかくしてくれるとともに、これまでの美術作品がよってたった方法論をい…
神学的な天使の考察ではなく、文化的表象、イメージとしての天使の位置と歴史的変遷をあつかった一冊。 わたしが強調しようとしたのは、天使の表象が、古来より基本的にずっと、キリスト教と異教、正統と異端との境界線を揺るがしてきた、ということである。…
ビジュアル本でほっこりする。80点で紹介する文字意匠に内在する文化的生活の力。 双喜紋、喜を横に二つ並べた「囍」の文字装飾のおさまりの良さに喜びが呼び起こされる。込められた意味を知るとラーメン用のどんぶりの飾り文字にさえ、どことなく愛おしさ…
一神教以外の聖なるものについての情報補給。シベリア、北アジア、中央アジアのシャーマンについての最近の研究の成果を、多くの図版とともに提供してくれる一冊。ソビエト社会主義連邦統治下では抑圧されていた宗教活動と研究が解放されたが故の活動の記録…
スクラップアンドビルドではなくストック活用。新規開発よりも修繕メンテナンス。革新というよりは保守。ユートピアに一挙に飛ばずに目の前のゴミを拾いながら歩いて進む。指摘されなければ知らないルターと日蓮の共通性を学ぶ。 時空を経て、お互いにはコミ…
本文に匹敵する分量の各時代の美に関わるテキストの引用が贅沢な一冊。全ページカラーの図版も豪華。全439ページ、値段も本体価格8000円、手元に置いて気になったときに眺めることができれば一番いい商品なのだが、田舎の一軒家で隠居暮らしができる…
読み通したあとに「訳者あとがき」でもともと点字出版のために書かれたテクストだったということをはじめて知り、哲学史にしては変な配分だなと思いつつ読んだ文章の意味合いを、あらためて想像してみようと思った。 原書のタイトルは『盲人のための哲学概論…
フッサールが『ブリタニカ百科事典』の求めに応じて「現象学」の項目のために執筆した四つの草稿を集成。フッサールの論文は決定稿よりも草稿のほうがわかりやすい。著作でいうと最終著作『ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学』(中公文庫)よりも草稿を…
近ごろ気になっている言葉は「内発性」「内的必然性」。ゆるぎない情動にしたがっている人物の濁りのなさと知恵の深さには、たとえ同意するまでにはいたらなくても、心をゆさぶる強さがある。 山口晃『ヘンな日本美術史』。これは前にも触れたことがある日本…
西洋近代哲学の精華の図式的理解に大変有効な一冊。ただ、著者の本当の希望である社会変革(「自由な市民社会」の確立)の起点としての著作となるには、重みにかける。整理はうまいが、人生を動かしてしまうほどの思索の迫力に欠ける。言いたいことだけを言…
ワシリー・カンディンスキー(1866 - 1944)はバウハウスでも教官をつとめた理論派の抽象画家。著作『点と線から面へ』は読んだこともあるが(メモ程度の感想ですがこちらです uho360.hatenablog.com )、 シュタイナーもいた神智学協会会員であったとは気が…
霊界の話。ひとくちに神秘思想といってもいろいろだ。プロティノスの哲学、エックハルトの宗教、そしてシュタイナーの神秘学。一般的に用いられる時の語のニュアンスとはすこし異なるが、シュタイナーが自身の霊学という神秘学の説明をする時にオカルトとい…
ヘラクレイトスが活動していた2500年前から、思索の本質は変わらない。だから、「思索は、世界を変革する」といわれても、思ったほどの速さや量では変わらないと思っておいた方がよいだろう。どちらかというと、本質から外れた思惟、『放下』でいわれて…
物理学はモデルよりもモデルのもととなる数式、方程式が大事。そのことを明確にしかも興味深く教えてくれるのがファインマン先生、さらによりかみ砕いて肝の食べやすい部分だけをさっと取り出してくれているのが竹内薫。本当は方程式を理解したほうがいいに…
哲学と芸術と政治を語ったメルロ=ポンティ晩年の著作。五十代前半で逝ってしまった詩的哲学者の存在が惜しい。死ねないんじゃないかと思うくらい長生きしたときにどんな文章を書いてくれていたかと想像すると、その存在の大きさに尊敬の念が湧いてくる。サ…
ウンベルト・エコ最後の著作。2000年から2015年にかけて週刊誌に連載してきたコラムのなかから、アクチュアリティを失っていないテーマをピックアップしたものに、アラン・W・ワッツ『禅の精神』(1959)への注記「禅と西欧」を付して編集刊行したもの。コ…
道徳をめぐるカントの思想は「物自体」の概念規定を含めて「純粋理性」を語る時よりも変わっている(トリッキー)と書き留めておきたい。「自由」の概念も常識的自由とはひどく異なっている。そして竹田青嗣による明晰な解読は、カントの特異性をますます際…
『知覚の現象学』を中心に語られる、メルロ=ポンティ導入の書。 【『知覚の現象学』「序論」からの引用】 感覚するとは、性質に生命的な価値を付与することであり、性質をまず、私たちに対しての意味、それが私たちの身体である、重みある塊にとっての意味…
松浦寿輝の東京大学退官記念講演と最終講義をまとめた一冊。読後に襲ってきたのは不安感。到底この人の域には行きつけないのに、なに読んでいるんだろうという無力感みたいなものが湧いてきた。才能があるのに何故日本では輝いて幸福そうには見えないのかと…
きれいに整理されていてわかりやすいというか付き合いやすい現象学の解説書。フッサール自身の文章の繰り言じみたしつこさ(=『ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学』を読んでの私の印象)を逆照射もしてくれて、フッサールの現象学へのこだわり方の特異…
入門書という位置づけとしては具だくさん且つ野心的な構成の一冊ではないかと思う。初期の『論理学研究』と中期の『イデーンⅠ』を中心に論は進められていくが、フレーゲとの差異やクオリアに関する議論などが混じって展開されるので、初級者には思考を追って…
よく出来たカント入門書。いきなり『純粋理性批判』ではなく要約版の『プロレゴーメナ』から入るべしという教え。300ページ程度で過不足なく紹介してくれているのがありがたい。ストレートな味わいですっきり読める。早稲田大学大学院での授業がベースと…
イタリアの天才物理学者が突然失踪した理由を思想的側面から推理するアガンベンの著作。著者がマヨラナの失踪について最終的に提示した見解よりも、そこに到るまでの統計確率の学問的解釈に目を惹かれた。「決断することを可能にする科学」としての統計確率…
エマニュエル・レヴィナスの弟子筋の宗教哲学系の作者が綴った穏健なスピノザ解説書。前半で『神学・政治論』、後半で『エチカ』を概観する。本書でいちばん目を引いたのはスティーヴン・ナドラーの『スピノザ』から引用された、ユダヤ教会からの破門状「ヘ…
ヒエロニムス・ボッスの植物系の形象について、理解が深くなればいいなと思い読みすすめてみたところ、ボッスよりもゴッホの樹木の意味合いについて教えられることが多かった。 錬金術においては、樹木は錬金術的変容の諸相の象徴とみなされ、梯子のように一…
訳者でもある上村忠男が読み解くアガンベンの《ホモ・サケル》プロジェクト。高名な方であるのにかかわらず、瑞々しく真摯な執筆の姿勢に頭が下がる思いがする。 アガンベンの仕事をたどるなか、ベンヤミンからスピノザへ導かれるような感触もあったので、ス…